先日前の会社の友人2人と酒を飲んだ時少し酔っ払って出した結論が「頭ばっかり使って体を使わん奴が偉くなり過ぎる」というものだった。ゴマメの歯軋りかと思っていたら、先日ウオール・ストリート・ジャーナルに「脳の老化防止にはエアロビクス(有酸素運動)が良い」という記事が出ていた。ここで紹介されている研究内容が正しいとすると率先して体を動かしている人は精神的に豊かな老後を迎えることができるかもしれないし、頭ばっかり使って人に指図したり言い訳を考えている人はその逆になるかもしれない。「禍福はあざなえる縄の如し」(史記 南越伝)というと大袈裟すぎるかもしれないが。
さて記事のポイントは次のとおりだ。
- 最近の研究によると脳の長期的でゆっくりした衰退は避けられないものではないかもしれないというとだ。1998年まで「年を取った脳は新しい神経を生まない」というドグマがあったがスウェーデンでの研究でこれは覆された。又最近の研究で週に3時間の有酸素運動が脳への血流を増加させ新しい神経細胞の誕生を促進する生化学的な引き金を引くということが分かってきた。
- 中年になると脳の経年劣化により情報処理速度が遅くなる。また古い脳は一つの仕事から他の仕事に切り替えるのに時間を要するようになり、同時に複数の仕事をこなす能力も低下する。一般的常識では精神的な鋭さを保つためにはクロスワードパズル、読書、楽器の演奏といった精神的な活動が必要と考えられてきた。
- しかし肉体的な活動が脳に与える利益について支持者が増えている。イリノイ大学のクラマー教授は以前に有酸素運動をした高齢者が数ヵ月後に認知機能を改善したことを示す幾つかの研究があるという。今同教授と同僚はこれらの改善の理由をを発見した。週3時間の有酸素運動は脳の灰色物質(神経)と白色物質(神経を結合する物質)を増加させると11月のメディカル・サイエンスに発表している。クラマー教授によると「3ヶ月の運動で脳の大きさは3歳若返った」ということだ。
- 実験によると灰色物質は命令や記憶をつかさどる前頭葉で最も増加し、白色物質は左右の脳を連結する脳梁部分で最も増加した。
- 動物実験によると運動によりIGF-1というインシュリンのような成長物質の血液内のレベルが高まった。通常IGF-1は血液と脳の障壁を越えないが、IGF-1は血流を増加させ更によいことに神経の幹細胞を実際の神経細胞に変化させる誘導を行なう。新しい記憶を形成する上で極めて重要な海馬は特にこのIGF-1の利益を受け易い。
現在私は週に2回程度ジムに行き合計3時間程度は有酸素運動を行なっているが、これが脳に良いということが分かったので是非続けようと思う。
ところで又私は月に1回位は朝から晩まで沢をよじ登ったり、雪をラッセルする激しい山登りをしている。これなら10歳位若返るのだろうか?それとも若返った結果このような若者の真似をする羽目に陥ったのだろうか?もっとも現在のところボランティアを使った実験では運動をすればする程脳が若返るという答は出ていないということだ。
Moderate exercise makes man helthという様な例文が中学か高校の英語の教科書に出ていたが、何事も程々ということだろう。下手な考えを休んで体を使えという教えは良いものである。