「顧客の評判が良くない大手銀行」というタイトルを見てドキリとしたり「そうだ、そうだ」と共感する人がいるかもしれないが、これは日本の話ではなくアメリカの話である。もっとも日本でも同じようなものかもしれないが。
11月12日のウオール・ストリート・ジャーナルに次のような記事が出ていた。
- アメリカ人は銀行の技術的なサービスについては高い評価を与えているが、顧客の目的を理解するため又は彼等のビジネスを理解するために時間を割くといった感情面のサポートについては高い評価を与えていない。この結果ひどく敵対的になっている顧客がいる。
- IBMのコンサルティング部門のIBMグローバル・ビジネス・サービスが約3千人の銀行顧客を調査したところ、52%の人が銀行は「合理的な面」~銀行業務へアクセスする多くの方法を提供するとか間違いを修正するとか~では良い仕事をしていると感じている。
- しかし「顧客のビジネスを評価する」「銀行員が顧客の言うことを聴いてフォローアップする」「関係のある提案を行なう」といった「感情的な面」で良い仕事をしていると感じる人は26%である。
- IBMの調査は顧客に対して「その銀行を友人に推薦するか?」「新しい商品が欲しい時その銀行にアプローチするか?」「他の銀行から競合商品の勧誘を受けても従来の銀行に留まっているか?」という形で質問を行なっている。
- その回答は約24%の人は「自分が使っている銀行を擁護する」約39%の人は「無関心」約37%の人は「反対する(敵対的)」である。
ここでちょっと面白いと思ったのは、「擁護・無関心・敵対」の3つの言葉が英語では"A"から始まることである。Adovocate(擁護)、Apathetic(無関心な)、Antagonistic(敵対的な)である。Apatheticは知らない言葉だったが、セットで覚えておくと便利だろう。
- IBMグローバル・ビジネス・サービスの銀行部門のヘッド・アームストロング氏は「銀行を擁護する人が少なく、敵対的な人が多いのでショックを受けている」「金融機関の種類別では信用組合(Credit Union)やコミュニティ・バンク等地域金融機関の評価の方が全国銀行より高い」「銀行が顧客や顧客の事業を評価していないので顧客はますます敵対的になる」という。「学ぶべきことは金融機関が何が顧客満足度を高めるかということをより熱心に見ることである」と同氏は言う。
この記事を読んだ後、某信託銀行の支店に現金を引き出しに行くとATMの数字盤に「数字をシャッフルするにはここを押してください」という表示があった。これは暗証番号の「盗み見」を防止するため数字の配列を不規則なものにするという意味でシャッフルという言葉を使っているものだ。シャッフルはShuffleで「足を引きずる。かき混ぜる。トランプの札を混ぜて切る」という意味だが、この言葉はそれ程一般的に使われていないだろう。「シャッフル」という文字を見て不安や戸惑いを感じる人もいるのではないだろうか。銀行のATMは英語に堪能な人だけが使う訳ではない。高齢の方の利用も多いはずなので、もっと平易な日本語で説明するべきだろう。
ついでにいうとこの銀行ではATMにICカード対応機と未対応機があり、それぞれカードを差し込む方向が反対になる。この辺りの説明も不十分で苦労しているお客さんがいた。私自身は銀行のIT化を支持しているが、不便に思う顧客が多いことを銀行は十分認識しておくべきだろう。さもないと4割近い人が大手銀行の対応に敵意を抱いているというのはアメリカの話で済まなくなるかもしれない。