今日(11月29日)は少し邦銀の株価が戻っているが、夏以降の下げがきつく少々の戻しでは追いつかない。一体どうして邦銀の株価は伸びないのか?ということを考えてみた。
まず株式投資を行なう時、「金融なら金融」「医薬なら医薬」というセクターを重視するか、その企業の存在する「国」を重視するかあるいはその企業の収益の源泉がどの国、どの地域にあるかを重視するかという投資スタンスが問題になる。年金運用や投資信託でも「国内株」「外国株」といった分類をするが、これはその企業の所属する国で投資対象を分類したに過ぎず、これだけ企業がグローバル化すると本当のリスク・プロファイルによる分類とは言いがたい。
メガバンクの例で話をすれば、2006年9月中間期末の3グループの海外向け貸出残高は22兆円強と前年同期比36%増えているが、一方国内貸出は余り伸びていない。つまりメガバンクの今後の収益特に限界的な収益はかなり海外収益に依存することが一層鮮明になった形だ。
とすればメガバンクの株を買うことと世界的に収益源を分散しているシティコープ(ティッカーC)の株を買うことにリスク・リターンの観点からどのような違いがあるのだろうか?シティコープの配当利回りは年間3.9%、PERは11.9倍、一方三菱UFJは配当利回り0.5%、PERは39.5倍(ADRベース)である。これでは為替リスクの問題を除けば、誰だって三菱UFJよりシティコープの株を買いたくなるだろう。唯一三菱UFJを買う理由があるとすれば、それは今後の大幅な値上りによるキャピタルゲイン狙いである。しかし最も手強い相手がひしめく国際金融市場でメガバンクが米銀や英国の銀行に勝てるのだろうかという疑問がわくのは当然だ。
つまり「メガバンクが国際業務を強化し、競争相手のシティなどと企業特性が似てくれば似てくる程同じ土俵でリスク・リターンを比較される」ということになり、配当利回りが余りにも貧弱な邦銀の株価は上昇しないということになる。
金融のようにグローバル化したセクターでは国内株・外国株という分類で企業を判断するより「業務特性」つまり「リティルに強い」(不況抵抗力がある)とか「投資銀行業務に強い」(高いβ値が期待できる)とか「中国に強い」などといったプロファイルで企業を選択する方が理にかなっているのではないだろうか?
このように考える投資家が増えているとすると邦銀の株価回復は結構しんどいかもしれない。つまり邦銀はまだ他者と際立つ収益特性を持つに至っていないのである。