金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

何でもありは欧州政府か連銀か?

2008年10月07日 | 金融

世界的な金融危機と株価大暴落の中で政府と中央銀行の振る舞いがほとんど何でもありの状態になってきた。ドイツでは政府が無制限に銀行預金の保護を行うと発表している。ドイツの立法プロセスは知らないが、このようなことを行政府が短期間に決められるのだろうか?予算措置はあるのだろうか?という疑問を禁じえない。因みにエコノミスト誌によると政府の債務(総ての銀行が破綻し政府の借金に振り代わったとしてだが)はGDPの2倍になるという。金融危機に陥ったアイルランドでは、政府が第3位の銀行Glitnirを国有化したが、一連の緊急対策で政府の負債はGDPの325%のなった(以前は25%)。このため政府の信用はガタ落ちしてアイルランド・クローネはユーロに対して3割下落している。

米国では連邦銀行が、銀行や企業あるいは地方政府が発行するコマーシャルペーパーを買取るプランを検討しているとニューヨーク・タイムズが報じていた。コマーシャルペーパー市場は買い手が減っているため、この1週間で11%も規模が縮小して1.6兆ドルになっている。しかも長い期間のコマーシャルペーパーは売れないので財務担当者は資金繰りが大変だろう。連銀が乗り出してコマーシャルペーパーを買う形で、企業の短期調達のめんどうを見ないと資金の出し手がいない状態なのだ。

もっとも連銀がコマーシャルペーパーを直接買取ることができるかどうかについては法的な問題もあると専門家は指摘する。一例としてこんな問題がある。連銀が信用リスクを考慮しないでコマーシャルペーパーを買うと発行者が破綻した場合、連銀は損失を被る。連銀が損失を被るということは、国民が損失を負担するということだ。一方連銀がもしある銘柄のコマーシャルペーパーを買わないと判断したことが分かるとその発行者は信用リスクありと市場から判断され、借入だけなく通常の商売も難しくなり、破綻してしまうだろう。

連銀が企業のコマーシャルペーパーを買うということはこのような利益相反が起きる可能性がある。

それにしても世界中で何でもありになってきた。これを「当局の機敏な動き」と評価するか「利益相反問題を引き起こす場当たり的な動き」と評価するかは・・・所詮は結果から判断されることになるのだろうか?

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締めるのは財布の口か紐か

2008年10月07日 | うんちく・小ネタ

景気が悪くなってくると、消費を抑えることが話題になるのは洋の東西を問わない。消費を抑えることを「財布の紐を締める」というのも、日本語、英語とも共通だ。英語ではtighten the purse stringsといういう。文字通り「財布の紐を締める」だ。もっとも日本語辞書を見ると「財布の口を閉める(締める)」という言い方もある。このような日本語、英語共通の表現は自然発生的に一致したものだろうか?それとも日本語か英語かどちらか先に慣用語があり、どちらかがそれを訳して使うようになったのだろうか?目下のところ答は分からないが、興味深い話だ。

「消費を抑える」ことのダイレクトな表現はcut spendingだ。U.S. shoppers cut spending.米国の消費者は消費を切り詰めている。また単にcut backという言い方もある。cut back自体は「短縮する」という意味だが、目的語を伴わないで消費を削減するという言い方をしている。ニューヨーク・タイムズにConsumers apear to have cut back sharply.という表現があった。「消費者は激しく消費を切り詰めていると見える」という意味だ。

米国では今「消費減退によるリセッション」の懸念が広がっていて、新聞記事にはcut backなどの文字が踊っている。アメリカ人が消費を抑えると中国の輸出が減退する。中国でモノ作りが減退すると、モノを作る機械を作っている日本の輸出も減退して、日本の景気が後退する。

アメリカ人の財布の紐が緩まないと日本人の財布の紐は緩まないのである。

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