銀行間の与信供与が少し緩みだしたことを好感して今週は株価が2日続けて上昇している。クレジット市場が緩み始めた理由の一つとして私は米国政府が、米銀の再編を指向していることが市場に伝わり始めたことがあるのではないかと考えている。
ニューヨーク・タイムズは匿名で財務省のある高官が「財務省は資本注入で弱い銀行を救済するつもりはない。我々の目的は金融市場を安定させるとともに、業界再編を進めることである」と語ったことを報じている。
財務省高官によるとスーパーリージョナルと呼ばれる二番手クラスの銀行~KeyCorpやFifth Third Bancorpなど~は、競争相手を買収できる立場にいながら、買収に乗り気でなかったり買収を完結する資本力に欠けている。そこで財務省は有利な条件で資本注入することで、銀行の合併を促進しようと考えている訳だ。
競争相手を買収する活動は戦略的であり、預金や融資の商品レベルで競争することは戦術的ないし戦闘的である。商品レベルで価格競争を繰り返すことは、業界の疲弊につながる。これに対して競争相手を減らす企業買収は適正な価格を維持する上で有効な手段だ。
今米国の財務省が金融業界に合併を求めていることは、様々なリスクに耐えうる大きな金融機関を作る上で有効な手段だ。
アメリカという国の最大の強みは「戦略的思考」ができる点である。そして第1ラウンドで負けてから粘っこいところである。もし米国の財務省がもくろむように、税金を有効に使いながら弱者を淘汰しながら金融界の再編を図ることができるならば「災いもって福となす」というには程遠くても、将来の金融安定には大いにプラスになるだろう。
そしてもし日本の金融当局がの動きを正確に理解して同じようなことを日本でも進めると日本の金融も良くなる・・と私は考えているが、こちらの動きは今のところ見えてこない。少なくとも私には。