昨日(10月13日)日本は体育の日で市場はお休みだった。米国では金融安定化策が具体化したことを好感してダウは936ポイント(11%)急上昇した。今日の東京市場前場もTopixは13%程急上昇している。この急上昇にはショートポジションを取っていた人の買戻しや、短期の鞘取り狙いの買いが相場を押し上げているから潮目が完全に変わったと判断するのは少し早いかもしれない。ただ相場には「まだはもうなり」という言葉があるので、ボトムフィッシングを狙う人はこの辺りが買い時だろう。もっともこの格言は「もうはまだなり」と対になっている。もう下がらないと思うとまだ底まで達していないという意味だ。
さて米国政府は打つべき手は打った。財務省は今日にも大手行に対して2,500億ドルの優先株出資を行う。この政府の出資に対して新聞は慎重に言葉を選んでいる。例えば政府の監督下に入るなどという言葉を避けている。「国有化」という言葉はアメリカ人に「社会主義」を連想させるので非常にマイナスなのだ。このところは銀行の国有化に慣れている欧州と違うところなので、注意を要するところだ。
ニューヨーク・タイムズによるとポールソン財務長官は、月曜日に主要9行の会長クラスを召集してプランの概要を告げている。それによるとポイントは「資本注入は既に議会で承認された不良債権救済プログラムTroubled Assets Relief Programの枠の中で行われる」「目標は銀行システムに巨額に資金を供給することなので、大手行全行が資金を受け入れる必要がある」「資金は永久優先株の形で投資されるので、株式の希釈化は起きない」というものだ。
優先株の金額はシティ、JPモルガンが各250億ドル、バンカメとウエルス・ファーゴが200億ドル。ただし両行についてはメリルリンチとワコビアの買収があるので各50億ドル上乗せする。ゴールドマンとモルガン・スタンレーは各100億ドル、メロンとステート・ストリートは20億ドルから30億ドルというものだ。
この合計が1,250億ドル従って残る1,250億ドルは地銀向けに投入ということになる。
また連邦預金保険機構は無利息預金(大部分の当座預金)について無制限の保証を行う予定だ。また連邦政府は銀行が新たに発行する債券について3年間の保証を与える予定だ。
これで米国政府は市場が求めてきた対策を全部打った。もっとも資本注入する銀行の経営陣の報酬についてはざっと読んだ記事には書いてなかったが。
これで金融市場は一段落するはずである。しかし景気悪化が眼に見えているので、銀行が企業や個人に対する信用供与を積極化するかどうかは別問題だ。先週の大暴落がパニックであるように、ここ数日はパニック的な上昇があるかもしれない。だが世界的な景気後退とイージーマネーの時代が過ぎたことを思うと株価の短期的な回復には限界があると考えておくべきだろう。