10月12日日曜日さわやかな秋晴れなので、ワイフと河童橋の道具祭りを見てから台東区を巡ることにした。高田馬場に向かう途中西武新宿線の線路脇に朝顔が沢山咲いていた。朝顔は夏の花だと思っていたが、帰ってから調べてみると朝顔は秋の季語だということが分かった。
朝顔や一輪深き淵の色 与謝蕪村
さて台東区を巡るには貸し自転車が便利だと思い、地下鉄仲御徒町駅の駐輪場内にある貸し自転車屋に寄ったが、総てレンタル中。それではと新御徒町駅の貸し自転車屋に回るがこちらも総て出払っていた。皆さん同じことを考えるものである。
そこで徒歩で台東区を巡りを開始。御徒町スタートだから徒歩でも良いか?というところだ。
まず春日通から合羽橋通りに向かう途中の「誓教寺」に葛飾北斎のお墓を訪ねることにした。ところがこの辺りはお寺が多くて探すのにちょっと苦労した。あるお寺の裏口から入り、庭掃除をしている上品な住職婦人に道を尋ねたところ「ちょっと待ってください」とご婦人は庫裏に入られ地図を持ってこられた。何と誓教寺はこの通りをはさんだ向こう側だった。「こんなに近くても知らないってことがあるのだろうか?」と私は疑問に思った。道を尋ねたご婦人は住職夫人ではなかったのかもしれない。
この辺りはお寺の多いところである。「剣客商売読本」の中で南原幹雄がこう書いている。「田原町や稲荷町は寺院や仏具屋がおおい町だった。仏具屋は相かわらずだが、寺院の姿があまりみえなくなっていた。が、そうおもったのはまちがいで、寺も相かわらずあったのである。ただ、寺がみなマンションふうの建物になっているので、それとわからなかっただけなのだ」
誓教寺の本堂もコンクリート造り。本堂の横に北斎の銅像があった。しかし墓地がどこにあるのか分からなかった。お寺の方を煩わすこともないので、銅像の写真を撮って立ち去る。
合羽橋道具街はこの三連休が道具祭りということで大変混んでいた。お客を集めているのは歩道に並べた安い食器類やロウ細工の食品の見本だ。スパゲティの模型が1,000円という具合に本物並みの値段である。レードル(注ぎ口がついたお玉)を一つ買っていく。
道具街の外れ、言問通りの手前に台東区中央図書館があり、ここに池波正太郎記念文庫がある。http://www.taitocity.net/tai-lib/ikenami/
図書館の中は撮影禁止なので外から一枚写す。左端に池波正太郎の写真が飾ってあるのが見える。
記念文庫に池波正太郎の生誕地記念碑が待乳山にあるというので、待乳山聖天へ向かうことにした。金竜小学校の少し北に台東区のコミュニティバス(めぐりんバス)の停車場があるので、ここからバスで待乳山のある墨田公園まで向かった。途中浅草寺を通ったが大変な人出だ。景気が良くないので都内見物でもしようという人が多いのだろうか?と考えたりする。
待乳山というと何となく言われがありそうな名前だが特にいわれはないという。昔は真土山と書いたから岩のない土の山ということだろう。前方後円墳ではないか?という説もあるが詮索は止める。
「聖天は娘の拝む神でなし」と詠まれたように本尊は男女抱合像(拝むことはできないと思うが)。お供え物の大根が沢山供えられていた。今も熱心な信者がおられるのだ。
公園の脇に池波正太郎生誕地の碑があった。
待乳山から浅草までは墨田公園の中を歩く。桜やアジサイの季節はきれいだろう。隅田川の向こうに立つアサヒビール本社の上に秋の雲が広がっていた。
その内もっと暇になると、池波正太郎の剣客商売を読み返して舞台となっている鐘ヶ淵などを散策してみたいと思う。今日はその小さな一歩だった。