デクシアDexiaの名前を聞いて直ぐ分かる人はかなりの金融通だ。最近でこそ日本の地方公共団体に長期融資を行うようになってきたので、日本でも知る人は知るようになっているかもしれない。少し説明をしておくと、デクシアは12年前にベルギーとフランスの地方政府が持っていた金融会社を合併して設立された地方公共団体向け与信を専門とする特殊な銀行で、ファイナンシャル・タイムズによるとこの分野で世界一だ。
ところが一連の金融危機がこの銀行をおそった。月曜日にデクシアの株価は30%急落した。その前にデクシアの資金調達コストは急激に上がっていた。デフォルト・スワップ市場におけるデクシアの信用スプレッドは625bpに達していた。これは市場金利に6%以上の調達コストを上乗せしないと資金が取れないことを意味する。地方公共団体向け融資という利鞘の薄い融資を行う銀行にとっては死活問題だ。
600bpを越す信用スプレッドは破綻したリーマン・ブラザースよりは低いが、かなりヤバイ水準である。この状態を見てベルギー・フランス・ルクセンブルグの政府は機敏に動き合計90億ドル(64億ユーロ)の資本注入を決定した。これをうけて会長とCEOが引責辞職することになった。
デクシアが信用危機に陥った直接の原因はリーマン・ブラザースへの巨額与信だ。同行は5億ユーロの無担保融資の他15億ユーロのレポ取引を行っていた。
問題債権はそれだけではなく、デクシアの米国法人Financial Security Assuaranceというモノライン保険会社が、モーゲージの保証で3億ドルを超える損失をだしていた。
リーマン・ブラザースへの融資やモーゲージの保証で損をすることは、よく目にする話で目新しさはない。私に目新しかったのは「地方公共団体融資専門銀行」という看板を掲げているデクシアが、米国の住宅ローン・リスクや投資銀行リスクをたっぷり抱えていたことである。看板と中身は大違いなのだ。
デクシアの投資家や預金者も同じような驚きをもったのではないだろうか?
金融機関についても○○専門銀行などといった最中(もなか)の皮だけでなく、ポートフォリオという餡子(あんこ)にも毒物が混じっていないかどうかチェックする必要があるということだ。餡子のチェックは簡単ではないが。