9月下旬にドイツの金融相シュタインブリュックが「金融におけるアメリカのスーパーパワーを終わった。これからはドイツやフランスが世界の金融秩序のルール作りにもの申すのだ」という主旨の発言をしたことはこのブログに書いた。ところがそれから10日も立たない内に、ドイツは自国の大手銀行ヒポ・リアル・エステイトの救済に350億ユーロを投入することになった。その少し前にはベルギー・フランスが出資するデクシアに両国が資本注入を決めているし、その前にはベルギー・ルクセンブルグ・オランダが大手行フォルティスの救済に動いている。
何のことはない金融不安は大西洋を渡って米国から欧州に広がっているどころか、欧州の状況の方が悪い位だ。アメリカの商業銀行は1ドルの預金に対して96セントの貸付を行っているが、欧州大陸の銀行は1ユーロの預金に対して1.4ユーロの貸付を行っている。マネーポジション(借入過多)なのだ。つまりマネーマーケットから資金を取って辻褄を合わせている。ところが現在のように銀行を含めて短期資金の出し手がカウンターパーティのリスクを恐れて、金を出し渋るとマネーマーケットは機能しなくなる。
欧州の銀行のバランスシートが悪化した直接の原因は、米国のサブプライムローン関連商品に投資したことだが、欧州の住宅市場でもバブルがはじけている。
米国では先週金曜日に「金融安定化法案」が下院で可決された。しかしそれ以降世界中で株価は下落を続けている。今日TOPIXはザラ場で1000ポイントを切った。「どうして株価はこんなに下がるのですか?」「どこまで下がるのですか?」という質問を受けるが答は簡単ではない。
金融問題が大西洋を渡って欧州に伝播したように、金融問題は今や米国のみならず世界各国で消費者のマインドの問題になっている。資産価値の下落、給与やボーナスが減る不安、雇用不安などが高まりあらゆる分野で財布の紐が締まり始めた。何が消費者マインドを好転させるキッカケになるかが分かるまで株価のターニングポイントは予想することが難しい。
主要国の財務大臣・中央銀行総裁が一緒になって、新しい金融市場の秩序作りを行い、金融市場が機能を回復することがまずその第一歩である。市場は4日の「欧州4カ国の共同声明」だけでは不十分と判断している。次の一手が重要になってきた。