今日(米国時間では10月1日)米国上院で金融安定化法案が可決された。金曜日に下院で可決すると不良資産化した住宅ローン等については買取先の目処がつく。しかしこれは問題解決のスタート点に過ぎない。住宅価格が安定しないと国民の負担増や金融機関の追加損失は避けられない。これら実体経済の問題は別の機会に論じるとして、金融上の大きな問題を先にみるとクレジット・デリバティブの問題が次の大きな問題である。
半月程前連銀はAIGを救済するため850億ドルの救済融資を行った。これはAIGが410億ドルの償却を行ったことに端を発する。AIGの損失の一部はオンバランスで保有していたCDOの価格下落に起因する。しかしそれだけではなく、AIGの損失は4千億ドルを超えるクレジット・デリバティブの引受にも起因する。AIGは他の投資家が保有しているCDOの信用リスクを引き受けていたのだ。もしAIGが破綻するとクレジット・デリバティブは履行されず、AIGに「保険料」を払っていた他の投資家は不測の損失を被る。連銀はこの信用リスクの負の連鎖を恐れたのだ。
今分かりやすい説明として「保険料」という言葉を使った。たしかにクレジット・デリバティブは保険と同じ経済効果がある。しかし重要な違いもある。それは保険は当局の監督下にあり、保険会社の資本つまり保険引受能力が監督されていることだ。一方クレジット・デリバティブの引受者は銀行・保険会社・ヘッジファンド等様々で監督する当局がないという違いがある。この違いは大きい。何故ならクレジットの引受手が保険事故(対象クレジットのデフォルト)を補償してくれるかどうか・・・ということが問題になった時、当局が規制・監督しているかどうかということは極めて大きい。
クレジット・デリバティブ問題は昔の相互銀行の「保証」問題を想起させる。当時資金力がなかった相互銀行は他の金融機関が企業に対して行う融資の保証を行うことで、資金を使わずに保証料という形で収入を得ていた。ところが不景気で企業の破綻が続くと相互銀行は予想外の保証履行を迫れら、それが相互銀行を破綻に追い込んだのである。
クレジット・デリバティブ問題は相互銀行の保証問題のアナロジーという面を持っている。スケールは違いすぎるが。
モーゲージ問題に解決の糸口をつけることができたら、次はクレジット・デリバティブの問題である。クレジット・デリバティブのプレーヤー達は投資銀行がステータスを捨て商業銀行に看板を書き換えたように、自由を捨て当局の監督下に入るべきだろう。