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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

株式持ち合いが株価下落を加速?

2008年11月07日 | 金融

エコノミスト誌は「日本の株式持合いが問題を悪化させている」という主旨の記事を掲載している。記事によると日本の株式持合いは1952年の三菱地所の買収防衛に始まり、1960年代に外資が日本企業の買収を始めた頃から買収防衛策として活用されてきた。1990年頃には生保を含む持合株は5割に達した。その後低下傾向にあり2割程度まで下がったが2004年からまた上昇傾向を示している。

エコノミスト誌はこれが昨今の株価下落時に日本企業の株価下落を加速しているという。つまり本業はしっかりしていても、保有している株価が低下すると評価損などにより当該企業の最終利益が悪化するという訳だ。

同紙は特に銀行への悪影響が大きいという。先月三大メガバンクは保有株式約12兆円の1割に当たる1.2兆円の評価損を出した。これは自己資本比率を約0.5%低下させる。自己資本比率を回復するためには増資か貸出を含む資産の減少を行う必要がある。モルガンスタンレーへの出資を決めている三菱UFJは1兆円の増資を計画していたが、この噂が市場に出ると希釈化を嫌う投資家の売りを浴び、株価は急落した。

仮に自己資本が5千億円減少した場合、増資せずに10%の自己資本比率を維持するとすれば運用資産を5兆円圧縮する必要がある。

エコノミスト誌はJTPという買収アドバイザーのBenes氏の「日本企業では50%近い議決権は2.1%の株主によって押さえられている」という見解を引用し、企業は株式持合い状況を開示して透明性を高めよと主張している。

このエコノミスト誌の見解について総てが正しいかどうかよく分からない。というのは株式持合いが高く株式の流動性が低い企業の場合、売買の出会いが少ないため、市場の下落時に大きく売り込まれることは少ないからだ。

また欧米でさかんなマネジメントバイアウトなどによる公開会社の非公開化というのも、株主の短期的な要求を避け、企業の長期的戦略を推進する策として実施される。株式持合いというのも、実質的な非公開化と言えなくもない。もっとも株式持合いの実態を知らない他の投資家の利益が損なわれることは問題なので、持合状況の開示を求める意見には賛成だ。

また銀行の貸出姿勢が持合株式の時価動向に左右されるというのも問題だ。話は少し飛躍するが、銀行は色々な企業の株式を保有する結果「貸出も行う株式投信」のようになっている。つまり銀行株はレバレッジが効いて(ベータが高くなって)、市場全体の動きよりも激しい動きをとる。また時価総額の大きい銀行株の株価が相場にフィードバックを起こすということが考えられる。

銀行の株式保有というのはこの点からも考える必要があるかもしれない。これは全くの私権だが。

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Ride out (イディオム・シリーズ)

2008年11月07日 | 英語

Ride outとは「困難や危険な状態を乗り切る」という意味だ。ニューヨーク・タイムズに次の文章が出ていた。Consumers buckle down to ride out a looming recession. 「消費者は不気味に忍び寄る不況を乗り切るためになすべきことを行っている」

Buckle downというのもイディオムで「行う必要のある仕事を行う」という意味だ。不況を乗り切るために消費者が行う必要があることは「消費を抑える」ことである。米国の10月の小売売上高は大きく落ち込んだ。今年のクリスマスシーズンのここ数年来で最悪の落ち込みになると予想されている。

消費低迷、企業収益の悪化、自動車業界の苦境など悪材料の中で、米国大統領選挙前に値上がりした株価はまた元の水準に落ちてきた。「株は噂で買って事実で売る」という諺どおり、オバマの勝利を予想して一時上昇した株価だが、迫り来る不況の足音に投資家が尻込みしたというところだ。

良い材料としては英国中銀が政策金利を1.5%下げた。またニューヨーク・タイムズによると、金融市場では先月コマーシャルペーパーの発行残高が505億ドル増えて1兆6千億ドルになったという好材料もある。しかし今日の米国の雇用統計発表を前に市場では弱気が跋扈したようだ。

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定額給付金の辞退、もう少し工夫はないか?

2008年11月07日 | 国際・政治

今日(11月7日)の日経新聞に「政府・与党は総額2兆円の定額給付金について、所得制限をせず、高額所得者の受取辞退を呼びかける方向になった」という記事があった。これは一国の政治というには程遠く、子供の学級会程度の発想と言わざるを得ない。

このような制度では高額所得者にとって「辞退する」ことによって、ほとんど満足感は得られない。有名人などに「あなたは辞退しましたか?」などとマスコミが書き立てて終わってしまうのが関の山である。

政治家という輩はどうしてもう少しましなアイディアがでないのだろうか?たとえば私は「高額所得者に受け取った給付金を本人の希望にそった慈善事業等に対する寄付金を受け付ける」という制度を作った方が良いと考える。

寄付の対象は「教育事業」でも良いし「先端医療技術開発」でも「クリーンエネルギー事業」でも何でも良い。しかも「給付金」にマッチングして自己資金を寄付して貰うような呼びかけをすると「寄付金」にレバレッジが働く。その「寄付」を「免税寄付」扱いにすれば、寄付金の額は相当増えるのではないだろうか?

寄付をする高額納税者にとっても「自分が辞退した給付金が何に使われるのか分からない」よりは「自分が社会的貢献をしたいと思っている分野に使われる」ということであれば、より積極的に寄付を行うのではないだろうか?

政治とは「そろばん勘定」を合わせることではない。社会に方向付けを与え、国民の力(この場合は高額所得者の資金)を引き出すことである。

「高額所得者の辞退を促す」などというのは戦時中の「欲しがりません。勝つまでは」とか「鍋・釜を供出して軍艦・戦車を作る」という程度の話でとても政策と言えたシロモノではない。

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