不況のリスクは「人々の夢や希望を奪う」ことである。夢や希望を失った人が直ちに犯罪に走るとは思わないが、失うもののない人が犯罪や暴動に走る可能性が高いことは確かだ。
中国の国家友展和政改革委員会National Development and Reform Commissionの張平Zhang Pion氏が、ニュース・カンファレンスで「世界的な金融危機の影響で、中国で工場閉鎖が起こり失業者が増え、社会的不安が増加する危険性が高まっている」と警告を発していることをファイナンシャル・タイムズで読んだ。
彼の警告は中国最大の輸出基地である深セン市の市長が「今年682の工場が閉鎖ないし操業停止を行った結果5万人の職が失われた」と発表した翌日行われた。中国の景気悪化の度合いは90年代後半のアジア通貨危機の時よりも深刻な様相を示している。
張平氏は4兆元(約5,860億ドル)の景気刺激対策の内訳の概要を始めて示した。ファイナンシャル・タイムズによると、4兆元の4分の3は向こう2年間でインフラ整備に使われる。内1.8兆元は鉄道・道路・空港などの交通施設へ、1兆元は四川省の地震復興へ投資される。
彼はこの政府投資は来年の経済成長を1%押し上げる効果があると述べたがこれは多くの民間エコノミストが予想するよりも低い数字だった。
不況はマイナス面が多いが、プラス面があるとすれば建設資材等の価格が下落していることと労働コストが低下していることである。中国がこの機会に大規模なインフラ整備を行い、景気を刺激しながら、国民生活の質の向上を図るならば、災い転じて福となすことができる。しかし舵取りを誤ると各地で大規模な暴動が起きる可能性を否定できないだろう。