金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

デトロイトを外国メーカーが代替する?

2008年11月17日 | 社会・経済

ビッグ3の苦境についてはこのブログで何回か取り上げたが、今日(11月17日)かなりショッキングな論評をニューヨーク・タイムズで読んだ。題名はIf Detroit falls, foreign makers could be buffer 「もしデトロイト(ビッグ3)が破綻したら、外国の自動車メーカーがバッファーとしてショックを吸収することができるだろう」だ。つまりアメリカで販売される車は破綻しなかった他のビッグ3と外国自動車メーカーで穴埋めができるということだ。

ショッキングなのは今週米国議会でビッグ3の救済策が討議される予定だが、その前に民主党寄り(民主党はビッグ3救済のための政府資金の投入を求めている)のニューヨーク・タイムズのこのような論評がでたことだ。

著者(Louis Uchitelle)は、景気が悪化する中で燃費の良い車しか売れないが、そのような車は日本やその他海外の自動車メーカーの強みで、ビッグ3は主力商品になる燃費の良い車を開発しておらず、これから開発するのでは遅過ぎろだろうと述べる。過去のようにアメリカで車が年間15百万台も売れる時代だと、ビッグ3にも生き残る余地があるが、現状のように10百万台レベルまで販売台数が低下した状態が続くと、税金を投入してビッグ3を救済しても、競争力のある車を作ることができず、結局自壊するというのが著者の主張だ。

全米の自動車メーカーの従業員は33.3万人で75%はビッグ3が雇用している。だが今年自動車メーカーと関連業界で既に10万人以上の従業員が解雇されていて、その大部分はビッグ3に関連している。雇用の面から見てもビッグ3は必ずしも広い支持を得られているとは限らない。

もっともビッグ3の一角が消滅して、外国企業が代替すると、アメリカで関連業界が受けるダメージは大きい。「ビッグ3が85%の部品を北米で調達しているのに較べて、外国の自動車メーカーは65%の部品しか北米で調達していない」とミシガン工業技術センターの主席調査員ルリア氏は述べている。またこのままでいくと、来年早々にも運転資金が枯渇すると予想されるGMだが、次世代電気自動車用のリチウム・イオン電池の開発に力を入れている。もしGMが破綻した場合、その開発は途絶えてしまう。どこか外国のメーカーがリチウム・イオン電池の開発は続けるだろうがそれはデトロイトではなくどこか外国で行われ、技術開発の機会を失うとある業界調査機関のエコノミストは述べている。

ビッグ3救済に政府資金を使うかどうかは焦眉の課題だ。その中で「ビッグ3の一角が破綻しても何とかなる」的な意見がクオリティ・ペーパーに出たことはかなりインパクトがあると思うが如何なものだろうか?

コメント
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