金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ビッグ3に管理された破産を

2008年11月20日 | 社会・経済

19日付のニューヨーク・タイムズを見ていると、この前の大統領選挙でマケインと共和党候補の地位を争ったミット・ロムニーが「ビッグ3に必要なのは、管理された破産だ」という寄稿を行っていた。ロムニーは前マサチューセッツ州知事で、その前は実業家として企業再生も手がけた人物だ。また彼の父親は、アメリカン・モーターズ(後にクライスラーに買収された)の再生を行った人物だ。このような人物だけに彼の提案は具体的で興味深いものがあった。

「管理された破産」Managed bankruptcyという言葉は耳慣れない言葉だ。しばしば耳にするのは、プリパッケージド・バンクラプシーという言葉でこれは「事前合意済の破産」つまり関係者間で、破産申請の前に権利調整が行われている破産だ。「管理された破産」もこれに似た面がありそうだが、政府が破産後のファイナンスなどに保証を提供する点などに特徴がある。

ロムニーの主張は「ビッグ3がトヨタなど外国の自動車メーカーと競争する場合の最大の弱点はコスト高」だという。給料・年金など広い意味の人件費負担は車1台当り2千ドルになるという。なおロムニーは言及していないが、借金漬けのビッグ3と事実上無借金に近いトヨタの車の間には「金利負担」の違いがあるので、1台当りのコストははるかに大きくなる。

次にロムニーは現在の経営陣を退陣させ、自動車業界外から「マーケッティング」「改革」「創造性」「従業員とのリレーションシップ」に優れた人材を採用するべきだと主張する。

また本当に必要な技術特に燃費改善技術に投資を惜しむな!と彼は主張する。そして政府は今のエネルギー関係調査研究費を40億ドルから200億ドルに引き上げるべきだと主張している。

ロムニーは自動車産業は雇用と産業の要という点で国益のために不可欠であり、以上のような点から「管理された破産」が必要だと主張している。彼の提案は連邦破産法11条を使った再建策の長所を生かしながら短所を補うものだ。

破産法適用の大きな長所は労働協約を抜本的に見直し、コストカットが可能になることだ。一方破産法の一つの短所はGMのワゴナー会長が主張しているように「チャプター11に陥った会社の車には部品供給や修理の保証がないと消費者が見るので車が売れなくなる」というものだ。これに対してロムニーの提案は「政府がワランティー(製品保証)に保証をつける」というもので、消費者不安を払拭させている。

これは中々面白い提案であり、関係者に影響を与えそうな気がしたのでご紹介した次第である。

コメント (1)
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