金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「来ただけ」の北岳

2009年08月02日 | 

8月最初の週末に一日休みを付けて、日本第二の高峰北岳と第四の高峰間ノ岳を登る予定で甲府から広河原に向かった。1日(土曜日)スーパーあずさ5号で9時29分に甲府着。10時の広河原行きバス(25,6名乗り)は満席となり一人が昇降口のステップに座る状態で出発した。12時広河原着。昼食を取った後、大樺沢から白根御池小屋を目指してまずバス停先のつり橋を渡る。つり橋の入り口には「今年は雪が多く、八本歯のコルに向かうルートは危険」と注意書きがある。我々も北岳からの降りにこのルートを使う予定だったが、数日前に山小屋に確認して中止を決めている。

大樺沢沿いの道は風が吹き渡り涼しい。

Ookanbasawa

天気予報が午後は雨と報じているだけあって湿気は高い。実際1時半頃から雨が降り出した。雨具をつけると中から蒸れて結局シャツや下着が濡れてしまう。暫くすると雷鳴が聞こえ出した。早く小屋に入りたいと思ったが、大樺沢を登る大部隊が前方を進むため比較的ゆっくりしたペースでしか歩けず白根御池小屋に午後3時15分に到着。広河原を出て丁度3時間、結局コースタイム通りだった。

小屋についた時も雨脚は強かったが、暫くすると一時雨が上がった。「鳳凰三山の上に虹が出ている!」という声でカメラを取りに行って戻った時には虹は消えていた。虹はもう見えなかったが、鳳凰三山の観音岳に向かって竜のように雲が昇っていった。昨年11月新雪の中を夜叉神峠から鳳凰三山に登り北岳の写真を撮ったことを思い出す。

Yakusi

定員100名の小屋にこの日は170名を詰め込んだという話で敷布団1枚に二人が寝るという混雑振りだった。夜中も雨が降る。朝3時半に起きて4時半からの食事に備える(並んだもの順)。食事を待ちながらテレビの天気予報を見ていると今日も一日ぱっとせず午後からは雨が強くなり雷雨も想像された。このような日は登っても景色が楽しめる訳でもないので、仲間のモチベーションも余り高くない。そこで今回はあっさり断念して明るくなった5時頃下山することにした。

下山準備をしているとそれまで降っていた雨が上がり、北岳当面の岩場に朝日があたりはじめた。

Moerukitadake

朝日の当たっている手前の岩稜はバットレスの中央稜なのだろうか?と思ったが全く自信はない。私は剣や槍穂高の岩場は何回も登っているが、北岳バットレスは一度も登ったことがない。いやそれどころか北岳にも登ったことがないのである。何時かその内と思いつつまだ登っていない北岳。今回雨を押して登ることはできたろうが、それは長年憧れの北岳頂上に立つ舞台としては好ましくない・・・・・

下の写真は初冬の北岳バットレスだ。私は霧雨の中にバットレスを幻視していた。

Battles_2

未練を残しつつ、白根御池小屋から広河原を目指して樹林帯を降っていくとやがてポツリポツリと雨が降り出した。2時間程で広河原に到着して大樺沢を見ると霧雨の中にバットレスが見えた。

「北岳の頂上に立つ日はあるだろうけれど、あの岩壁を攀じることはないだろう。岩を登るにはもう年を取り過ぎたな」とある種の諦観が頭をよぎった。「いやそう悲しむこともあるまい。20歳には20歳の山があり、60歳には60歳の山がある。次は『来ただけ』でなく頂上まで行きたいものだ。」と思って私は乗り合いタクシーの最後部に身を沈めた。

コメント
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