つまらない小話から始めよう。「タープ」(TARP)という言葉を見て、読者の皆さんは何を思うだろうか?私のブログの読者は証券会社など金融機関の方が多いから(素人のブログなんか読んでないで、マーケットを見ていて下さいね。笑)、米国の問題債権買取プログラムのことを思い出す人が多いだろう。だが、たまに立ち寄ってくれる山好きの人は、テントの代用品として使う防水布のことを思い付かれるのではないだろうか?こちらの「タープ」もスペルはTARP。語源はTar(タール)を塗って防水性を出したPall(幕)、つまり防水布のことだ。この防水布を屋根のようにすると簡易なテントができる。スソや両脇が開いているので、尾根筋であまり使えないが、夏の沢登りでは重宝する野営道具だ。
問題債権買取プログラムTroubled Asset Relief Programを命名した人は、防水布のTARPを意識して「金融機関の防水布」という意味をこめて命名したのだろうか?それともたまたまの附合なのだろうか?前者だとすると中々ユーモアのセンスのある命名だが、確かめるすべもないまま時間が足ってしまった。
さてニューヨーク・タイムズによると、会計事務所のKPMGは米国130の金融機関のトップに調査をかけて、業況の回復見通しを調査した。それによると7割のトップが「2009年に業況は底を付け来年は回復に向かう」と回答している。ただし金融機関の業況回復が経済全般の回復に先行するか遅行するかについては意見が半々に分かれている。
調査によると半分以上のトップは、景気の悪化局面で資本調達やオペレーションに必要な資金調達を行うことがより困難だったことを認めている。昨年の金融危機の最中に政府は7千億ドルのTARPを発動させて、金融機関に緊急ファイナンスを行った。
KPMGの調査によると今なお金融機関のトップの最大の懸念は「問題債権の取扱」と「新しい収入源を見つけること」「資本調達」である。またトップ連中は住宅市場安定、消費者信任の改善、雇用創造の兆しを探し求めている。
私見でいうとこの中で一番遅れるのは雇用市場の改善だ。多くの金融機関は他業界と同様雇用削減で収益改善を図っている。そして金融機関のトップ自身金融機関の雇用状況が大きく改善するとは期待していない。金融機関トップの3分の2は雇用削減は終わったと回答し、4分の1は金融機関の雇用は更に悪くなると予想している。来年金融機関の雇用状況が良くなると考えているトップは3割に過ぎない。
金融機関が防水布を払いのけて新しい歩みを始めるには、もう少し時間がかかるということだろうか?