ファイナンシャル・タイムズは「民主党の政策は経済成長に短期的にポジティブ、中期的にネガティブ、そして恐らく長期的にはポジティブ」というクレディスイスの白川浩道エコノミストの見解を紹介していた。
民主党の少子化対策は、中学生までの児童を持つ家庭に月2.6万円の育児手当を支給するというもので、総額5.5兆円の予算になるという。民主党はこの資金を増税ではなく、政府の無駄な支出をカットすることで捻出すると宣言している。UBSのエコノミストは「もし民主党が、支出削減だけで財源を捻出することが出来なければ、数兆円の国債を発行して、資金を手当てするだろう。これは経済的な問題というよりも政治的な問題である」と述べている。
エコノミスト達は民主党の政策により、財政状況が一層悪化しても、それが直ちに国債利回りの急上昇や円に対する信任危機には結びつかないと見ている。
白川エコノミストによると「民主党の政策は、短期的には支出を増やすので経済成長にプラスに働く。しかし製造業派遣の禁止や地球温暖化対策で従来より厳しいスタンスを取るので、生産性が向上せず、中期的にはネガティブ。ただし出生率の上昇が長期的には経済成長を押し上げるので恐らくプラス」ということだ。
ところでFTは別の記事で「アイスランドに『経済危機ベビーブーム』が起きた」と報じていた。何人かのコメンテーターによると「昨年の金融危機で厳しいリセッションに陥ったアイスランドで、人々は愛とセックスに慰めを求めた結果、出生率が上昇した」と述べている。なおこの説には反対の人もいて「危機がベビーブームをもたらしたという統計的有意性はない」と述べていた。
ただ一つの仮説として「景気後退で夫婦に家庭で過ごす時間が増え、それが出生率向上につながった」という説は注目しておいて良いような気がする。以前にブログで述べたが「出生率の向上には育児手当の支給だけではなく、夫婦が共有する時間や母親が安心して子育てできる環境作りが重要」なのである。この説が正しいかどうかは民主党が政権を取った後、児童手当で出生率が上昇するかどうか?によって検証されるだろう。
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出生率の増加と経済成長については、私は就学児童が増えると一時的に経済成長は鈍化すると考えている。その理由は教育への投資が増え、生産財への投資が減るからである。このことは日本が少子化策を取って高度経済成長を遂げたことの逆コースだと考えると分かりやすい。経済成長が起きるのはその子供達が就業する時である。出生率の向上はかなり長期にわたる経済成長の押し下げ要因であると私は見ている。私は出生率の向上に賛成だが、このような展望は持っておくべきだと考えている。