金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

三公七民、日本は良い国です。

2009年08月31日 | うんちく・小ネタ

一ヶ月程前まで日本のことは世界のマスコミを賑わすことは殆どなかったが、さすがに今回の総選挙前から「自民党一党政治の終わり」ということで日本の政治が話題になっていた。だが私は一般の外国人にとって「一体日本の何が悪くて何が問題なのか?」よく分からないのではないか?という疑問を持っている。例えば国内では「格差が広がった」などということが騒がれるが、世界の常識から見ると日本ほど格差の少ない社会は相変わらず珍しい。選挙をするとその日の夜中にもう大方の結果が判明するという類を見ない程正確な選挙システムや以前より悪化したとはいえ、世界トップレベルの治安システム。

今日話題にする「所得税+社会保険料の個人負担」の低さも世界トップレベルなのだ。

エコノミスト誌は簡単なグラフで世界主要国の個人(所得税と社会保険料の収入に占める割合)税率を紹介していた。それによると税率が一番高いのはスロベニアで約55%だ。江戸時代風にいうと五公五民を越えて、六公四民に近い水準だ。

次に税率が高い国はインド、イタリア、スウェーデンで税率は40%を越えている。フランス、ドイツも税率は35%だ。税率が30%を切る国は中国、日本、アメリカで、一番税率が低い国はスイスで20%以下だ。

もっとも日本の場合、赤字国債を発行して帳尻を合わせてきた結果、国債残高がGDPの二倍になっているので手放しで「三公七民」と胸をはることは出来ないが。

繰り返しになるが、これらの数字だけを見ていると日本のことをよく知らない外国人は「一体日本のどこが問題で、自民党がこんなに大敗したのか理解できん」と思うのではないだろうか?あるいは色々なものはあるが、ないものは若者の希望というと理解するだろうか?

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民主党勝利で株は短期上昇、長期不透明

2009年08月31日 | 株式

民主党が大勝した翌日(今日、8月30日)の日本株は一時2百円程上昇した。これが民主党の勝利を歓迎したものか、朝方発表された鉱工業生産指数(5ヶ月連続上昇)を好感したものかは分からないが(それに株高が今日一杯持つかどうかも不明だが)。

「民主党の勝利で短期的に株価が上昇する」というのは多くのアナリストの見方だ。ファイナンシャル・タイムズはAnalysts sceptical about long-term benefitsという記事で「民主党政権で長期的には不透明感高まる」というアナリスト連中のコメントを載せている。

民主党政権下で短期的に株価が上昇するという推測が働くのは、「子ども手当て」や農家への所得保障で今まで消費余力が少なかった層の消費が増えると期待するからだ。だがこれらの財源捻出のために、増税となる消費者がいる。民主党は配偶者控除の廃止を掲げているが、FTによるとバークレーズ・キャピタルのレポートは「配偶者控除廃止で1兆5千億円の増税」と報告している。

バークレーズの推測ではこれらの手当て・増税を相殺すると家計の可処分所得の増加は「2010年度で1兆2千億円、翌年度に4兆円」で、個人消費は各々8千億円、2兆8千億円増加するということだ。

また民主党は2013年までに「無駄な支出の削減」で9兆1千億円を捻出すると宣言しているが、この支出削減は消費削減に働く。バークレーズは官需の減少は2010年度で8千億円、2011年度で1兆6千億円と予想している。

これらのことを総合すると2010年度のGDP押し上げ効果は僅か1千億円で、2011年度でも1兆3千億円しかない(GDPの0.2%)ということだ。

だがより大きな問題は民主党の経済成長政策が見えないことだ。FTはマッコリー社のチーフ・エコノミストRichard Jerram氏の「我々は民主党の事実上の社会主義への傾斜と経済のパフォーマンス改善の明快な計画の欠如に懸念を覚える」という言葉を紹介している。

☆    ☆    ☆

以下幾つか個人的な感想を述べる。

別のブログや小雑誌で何度も書いたが「子ども手当て」が、少子化に歯止めをかけるとは考え難い。配偶者控除の廃止で、子育て終了世代から子育て世代へ所得再配分効果はあるがそれだけで少子化が止まるとは考え難い。

民主党は「経済成長を維持するための産業優先の政策よりも生活重視の政策」を旗印にして政権を取ったのだから、政府主導の経済成長を期待する方が無理というもの。

民主党が非現実的な左翼勢力と手を切って「中心からやや左寄り」程度の勢力で安定的に政権を運営するには、来年の参院選挙で単独勝利をする必要があるが、「移ろいやすい民意」はそれまで民主党をサポートするだろうか?

などなど考えるともし短期的な日本株の上昇があれば、取りあえず売っておくというのは良いアイディアかもしれない・・・と私は思い始めている。

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