金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ジャンクフード課税は効果なし?

2009年08月03日 | 社会・経済

エコノミスト誌によると米国でジャンクフードに対する課税論議が高まっているということだ。議会は健康保険コストの増加をカバーする一策として糖分の多い飲み物に対する課税を考えている。6月27日にシンクタンクのアーバン・インスティティチュートは「栄養的な価値がほとんどなく脂肪分の多い食料に対する10%課税」を提案した。同シンクタンクはこれで向こう10年間に5千億ドルの税金を上げることができると主張している。

この「ジャンクフード課税」は「ピグー税」の一種だ。ピグー税とは考案者の経済学者アーサー・ピグーに由来する「外部不経済」に対する課税で環境税やタバコ税がその例だ。

米国でジャンクフードに課税する議論が高まっているのは、肥満が医療費増大の大きな原因になっているからだ。エコノミスト誌によると米国人の3分の1は肥満である(80年は15%だった)。肥満者の医療費はやせている人より年間7百ドル多い。全米では肥満者の医療費は年間2千億ドルを越える。肥満者の医療費はそれ以外の人々にも負担されるので「肥満は外部不経済」という議論が成り立つ訳だ。

だがエコノミスト誌は幾つかの観点からジャンクフード課税に疑問を呈している。一つの重要な点はジャンクフードそのものがタバコや過度のギャンブルのように外部不経済の原因とはいえない点だ。肥満はカロリーの取り過ぎとともに運動不足により起きる。エコノミスト誌は「脂っこいものを食べても頻繁に運動すると太らないので外部不経済を発生させない」「直ぐ手に入るジャンクフードが課税により高くなると、人々は生の食材の購入と家庭での調理により多くの時間を割くため運動する時間が少なくなる可能性がある」と主張する。

まあ「食べても運動すりゃ良い」という議論には個人的には同感(私も食べ過ぎ・飲み過ぎ傾向だが運動でかろうじて体重を抑えている)だが、後半の議論はエコノミスト誌らしからぬ屁理屈という気がするが。

むしろ同誌が後半で展開している議論の方が説得力があるかもしれない。それは「ヘビースモーカーやヘビードリンカーは、税金で価格が上がってもタバコや酒の消費を余り抑えようとしないように、ジャンクフード愛好者は課税されても、ジャンクフードの消費を減らさないのではないか?」というものだ。

ジャンクフード愛好者は概して貧しく、その住居地域には生鮮食料品売り場がほとんどないだろう。従ってジャンクフード課税は結局貧しい人の健康を改善には貢献せず、可処分所得を減らす結果に終わるだろうと同誌は警告して記事を締めくくっている。

日本では米国ほど肥満者は多くないし、ジャンクフード課税のような極端な議論は起きていない。日本で考えなければならないのは肥満よりも、寝たきり老人に代表されるような骨・関節の障害等による運動障害の問題ではないだろうか?と私は考えている。

そこで私が提案したいことは「健康維持・改善のために積極的に活動する人に対する減税処置」である。医療費控除は年間10万円以上の医療費を支払った人の医療費を所得控除する仕組みだが、病気を未然に防ぐために運動する人に「スポーツジム費控除」のような減税処置があっても良いような気がしている。

もっとも「運動が健康維持に与える効果」は医学的に立証されているとは限らないし、ジムだけが健康維持に良い運動ではない。ゴルフも山登りも体に良い。だからゴルフも「運動費控除」の対象にしろ、ということになるとこれは高所得者優遇と批判され、余り支持を得られないだろう。だが主婦層や退職者が近所のスポーツジムで筋力維持を図るような活動には、医療費抑制効果があると私は考えている。税金等で後押しを考えるべきではないだろうか?

もし「登山費の所得控除」でも掲げる政党があると一も二もなく投票するのだが・・・・

コメント
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