ニューヨーク・タイムズに「米国の預金保険が枯渇しそうで、大手行からの借り入れで凌ぐかもしれない」という記事が出ていた。米国の預金保険公社は4兆8千億ドルの預金に保険を提供しているが、今年初めから94の銀行が破綻したため、預金保険ファンドの残高は年初の3分の1の100億ドルにまで減少している。
法律により預金保険公社は財務省から1千億ドルの借入を行うことができる。しかし預金保険公社のシーラ・ベア総裁はガイトナー財務長官と関係がギクシャクしているので、市中大手行からつなぎ資金を借りるのではないかと観測されている。このプランは大手行も歓迎している。何故なら預金保険公社が政府資金を借りることになると、世論は銀行に対する規制強化を求めるからだ。
預金保険ファンドが急速に枯渇したのは、銀行の破綻が続出し、預金保険ファンドからの支払が急増したからだ。今倒産しているのは中小金融機関でその救済のために一時公的支援を受けた大手行が資金を融資するというのは皮肉っぽい話である。
だがこのことは「他山の石」としてよく勉強しておく必要があるだろう。日本で亀井金融担当大臣が「中小企業融資の3年間モラトリアム」提案を行っているが、万一モラトリアムが実施されると破綻する銀行が急増する。大臣は「その時は国が銀行を救済すればよい」と言っているが、先進国で一番財政状況が悪い国にそのようなお金がある訳がない。
国は国債という借金で破綻した銀行を救済するが、その国債を買うのは破綻していない銀行である(そして最終的に返済するのは国民である)。実体経済がよくならない限り、借金の付回しをしても物事は解決しないのである。