今週のエコノミスト誌はPoodle or Pekinese? (プードルかペキニーズか?)という題で鳩山新政権の外交問題を解説している。プードルかペキニーズかとは「米国向き」か「中国向き」かということの比喩だが、プードルの中にはある揶揄が秘められているようだ。まあ、これは最後に明らかにするとして記事のポイントを紹介しよう。
エコノミスト誌は来週のG20で鳩山首相が外交デビューするが「政権交代が諸外国にとって何を意味するのかはミステリーのまま終わるのじゃないか?」と述べる。
今までのところ新政権は非常に矛盾したメッセージを発信している。エコノミスト誌が特に指摘しているのは「新政権は米国と『より対等な関係』を確立すると言いながら、国防予算を増加させる余地がほとんどない」という点だ。以下は明白な事実だが再認識のため改めて述べておこう。
第二次大戦後、米国は日本に134の米軍基地を起きその総面積は東京の1.5倍になる。当初米国は日本の非軍事化を進めたが、冷戦時代に入り再軍備を進めた。そしてブッシュ前政権の時に「テロへの参戦」を奨励した。米国の防衛力のお陰で日本の国防予算はGDPの1%程度と非常に低い水準で済んでいる。米国の国防予算は4%だ。北朝鮮のミサイル・核攻撃リスクや中国の潜水艦隊増強などの軍事リスクを考えると「より対等な関係」を求めると、日本は独自で防衛力を増強する必要がある。GDPの1%というと「子ども手当」と同額の金額だ。「子ども手当」の財源も不明(少なくとも私には)の中、「対等な関係」に必要な国防予算をどう捻出するのだろうか?それとも鳩山内閣は防衛は米国に任せたまま、対等な関係を主張するのだろうか?
もし後者だとするとこれは全く世界に通用しない妄言である。
この辺りを見透かして次のアメリカン・ジャーナルで3人の専門家が民主党の対米主張は形だけだろうという解説を行うとエコノミスト誌は述べている。より詳しく専門家の主張を紹介すると「ブッシュ前政権の外交政策を批判していた民主党は『オバマ大統領はブッシュ前大統領とは違う』という口実の下でオバマ政権と歩調を合わせたいという強い意志表明を行うだろう。『より対等な関係』というのは象徴的なもので、実質的な修正やコストを伴うものではないだろう。」ということだ。
エコノミスト誌は「日本にとってアジア諸国との親交関係の確立は必ずしも米国との関係悪化を伴うものではない」と述べた後「歴史を見ると国を開いている時の日本は、覇権国家や覇権を目指す国家~近世の中国、ナチス・ドイツ、戦後の米国~を見つけ、サポートする傾向があった」と解説している。そして昨今の日本政府は冷戦後の外交政策の明確化に苦労してきたが、鳩山政権は新しい試みをする良いポジションにいるかもしれない」と述べている。
さてそこで最初に述べた「プードル」が秘める揶揄である。実はプードルには「媚びへつらう人」という意味がある。ペキニーズは中国の愛玩犬だから、エコノミスト誌がいうPoodle or Pekineseは「鳩山首相は米国に媚びへつらう人か中国の愛玩犬か?」というニュアンスを含んでいるかもしれない。深読み過ぎるかもしれないが、英国人は時として意地の悪いユーモアを使う。真偽はさておき「対等を主張するなら国防費をもっと使え!」という批判は内包している記事だと私は読んだ。