金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

小沢・クリントン比喩説

2009年09月01日 | 国際・政治

何事によれ事情をよく分からない人に簡単に説明する方法は比喩を使うことだ。ただしこの方法の問題は比喩が一人歩きして聞き手の中で勝手なイメージが膨らむリスクがあることだ。

さて民主党政権の権力構造については、米国の外交専門家の間の大きな関心事で外交評議会のホームページに「日本の新しい影の将軍」Japan's New Shadow Shogunという記事が出ていた。書き手はTobias Harris氏というMITの博士課程の人だ。新しい影の将軍とは民主党の小沢一郎氏のことだ。Harris氏の小沢氏に対する研究や理解は非常に深いものがあるが~内容は日本のマスコミ等で得られる情報と変わらないので省略して~、面白いところを述べると「小沢氏と鳩山代表の関係は、ビル・クリントンとオバマ大統領の関係に似ている」と説明している点だ。

原文を引用するとThe question now is how to fit this outsize figure into the new government -- a problem similar to the one faced by Democratic Party loyalists in the United States over Bill Clinton's role in the Obama administration.

「今の問題はこの大物(小沢氏)を新しい政権にどのように当てはめるかということだ。これはオバマ政権におけるクリントン元大統領の役割について民主党支持者が直面した問題と同様のものだ。」

さて冒頭「比喩は一人歩きして聞き手の中で勝手なイメージが膨らむ」と言った理由は、後段でHarris氏が「鳩山代表は政策に関する知見が乏しく、弱い指導者だという評判があるので、小沢氏を内閣に入れることは意味があるだろう」と述べている点だ。この論法で行くとオバマ大統領が政策の知見に乏しくリーダーシップが弱い・・ということになる。(これはHarris氏の本論でないので揚げ足をとることは良くないが)

話を本筋に戻すとHarris氏は「小沢氏を幹事長に据えるのが、恐らく鳩山代表の望むところで、次の参院選挙対策上もベストなのだけれども、これでは民主党の公約~権力の二重構造廃止~に反するから困難だ」と述べる。そして「鳩山代表は指導力が弱いので、彼の成否は強力な閣僚を揃えられるかどうかによる。小沢氏は副首相か無任所大臣として入閣すると良いのだが、それでは鳩山代表はアヤツリ人形と批判を浴びるだろう」と続ける。つまり幹事長ポストも副首相ポストも難しいという意見だ。

もっとも最後にHarris氏は現在の民主党は過去よりも結束が強いので小沢氏の影響力を過大視してるのかもしれないと結んでいる。

いずれにしても鳩山代表は「政策に関する貧困な知見しかない弱い指導者」と決め付けられているので、もし彼がこの文章を読むと不快感を禁じえないだろう。ひょっとするとこれは「米国ともっと対等な関係を求める」とか「インド洋での給油活動を止めることを示唆」したことに対する悪印象が背景にあるのかもしれない。これは全くの個人的推測だが。

いずれにせよ世界の日本ワッチャーは新内閣と民主党の新体制において小沢氏をどう処遇するか、旧社会党系の人や社民党をどう取り扱うかという辺りに大きな関心を置いている。これは鳩山代表の指導力の試金石でもあるからだ。

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サマーラリーの後は急降下?

2009年09月01日 | 株式

夏場に株式相場が上昇する現象をサマーラリーというそうだが、歴史的に見て当たっているかどうかは検証していない。ニューヨーク・タイムズに「3月半ばから15%以上上昇した相場は歴史的に見て一番パフォーマンスが悪い9月に向かって下落しそうだ」という記事があったことを見ると、8月のパフォーマンスが良く9月は悪いと米国株投資家は信じているのかもしれない。

このようなアノマリーより確かなことはタ「企業経営者などインサイダーの売りが急増している」ということだ。タイムスによると「 調査会社TrimTabs によるとインサイダーの売りはインサイダーの買いの30倍にのぼり、2004年の調査開始以来最高の売り比率」ということだ。企業経営の実情を知っている人が8月の株高を売りの絶好のタイミングと判断した理由は、株価の上昇速度が速過ぎ、株価に割高感が出てきたことと企業のトップライン(売上)が伸びない中、コストカットでボトムラインを改善してきたことの限界を感じているからだろう。

Daily Sentiment Indexという小口トレーダーのムードを図る指数によると、今年3月に楽観的だったトレーダーはたった2%だったが、現在は89%のトレーダーが強気だという。これは過熱相場だ。過熱相場の後にはコレクションが待っている。

タイムスによるとJPモルガンの株式ストラテジストは彼等が話す相手は10%程のコレクションがあると見ているということだ。

私は株式相場がクラッシュしないためには、この辺りで速度調整が必要だと感じている。気になることは10%程度の水準訂正で済むかどうかという点だが。

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民主党への政権交代、辛抱強く見守って

2009年09月01日 | 国際・政治

「民主党への政権交代を辛抱強く見守って欲しい」というのは私の意見ではない。米国の外交政策に大きな影響力を持つと言われている米国外交問題評議会Council on Foreign Relationsの日本研究の専門家・スミス女史がオバマ政権に対して要望していることだ。

スミス女史は「政権交代には時間がかかるものだ。特に日本の民主党政権が外交政策の優先順位を精緻化するには時間がかかる。米国政府は日本の本格的な政権交代には慣れていないが、辛抱強く対応することが必要だろう」と述べている。このスミス女史の「日本の選択の時」Japan's Moment of Choiceは勿論米国人を対象としたものだが、平明で読み易い英語で書いているので、ひょっとしたら日本の政治家や外交担当者が読むことを意識しているのかもしれない。

女史のメモから民主党の外交政策に関するところを少し抜粋する。「民主党政権は米国とより『対等な関係』を構築することを主張している。特に『米軍の受入・支援』と『日米地位協定』の見直しを主張している。」「また民主党はインド洋における給油活動の終了と沖縄(普天間)の米軍基地の再編を示唆している。」「民主党はアジアの近隣諸国との関係強化を示唆している。だが民主党幹部が示唆する本当の変化は日本の第二次大戦の遺産と正面から向き合うことである」「無論民主党幹部の間で温度差はあるが、国連安全保障委員会の決議がない限り、自衛隊を国際協力の手段として使うことに熱心でない」

スミス女史の民主党外交政策に関する見解は巷の理解と一緒である。この後女史は「民主党にとって重要なことは米国政府と一緒に作業をする分野を明確にすることだろう」と述べそれは「北朝鮮の核拡散防止」であり「G20における世界経済の復活に対する努力」だと付け加える。

そして最後に日本で政権交代システムが根付くには後何回か選挙を行う必要があるので、日本国民のみならず外国も忍耐するべきだと結んでいる。

だが私は日本国民や外国政府がそんなに辛抱強いかどうか疑問である。グローバル化により世界の出来事は瞬時に影響しあうようになり、迅速な対応が求められる。日本の政治事情に合わせてゆっくり動いてはくれない。

国内でも具体的な成果が見えないとマスコミの世論調査で「内閣支持率」が下がり、政権の運命に暗雲を投げかける。何時の頃からか大きな影響力を持つようになった「内閣支持率」だが良いところばかりではない。悪いところは政治がポピュリズムに陥る危険性だ。国民の短期的な関心を買うためにバラマキ政策に走るリスクがある。

そういうリスクを排除するためには、一度選んだ首相には一定期間国政を委ねるという仕組みと二大政党制というのはセットものではないだろうか?と私は考えている。

また官僚任せの政策作りから脱却するには「シンクタンク」のような組織の存在が必要だ。例えば「米国外交問題評議会」のような組織が外交問題に対して提言を行い、政権がその「思想」を政策化していく・・・という仕組みが議員主導の政策作りには必要である。その仕組みがない中で、官僚排除を打ち出しすぎると民主党は墓穴を掘る可能性もある。

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