今日(9月24日)の日本の新聞は鳩山首相とオバマ大統領がニューヨークのホテルで会談し「同盟関係の堅持を確認したが、インド洋での給油活動延長問題には直接言及しなかった」ことを一面で報じている。この会談についてニューヨーク・タイムズがどう評価しているかチェックしてみたが、記事を見つけることができなかった。G20で各国首脳が訪米し、オバマ大統領と会談しているので「内容のない会談」(アメリカにとって)はニュース・バリューがなかったということだろう。
更に深読みすると「アフガン戦略の重要な転換点」を迎えているアメリカにとって「インド洋の給油活動」の意味が大きく変化する可能性もあるので、急がない問題は後回しにして喫緊の問題に専念するということが考えられる。
オバマ政権にとって喫緊の課題は、早急にアフガン戦略を見直すことだ。引き金になっているのは、アフガニスタンの不正選挙とアフガニスタン派遣軍のマクリスタル司令官からの増員要請だ。更に最新の情報では「タリバンがパキスタン国内の聖域を利用してアフガニスタンで内乱を起こしている」という事実だ。
これまでのオバマ大統領のアフガニスタン戦略は「内乱対策」で、しっかりした政権を樹立していこうというものだった。しかし不正選挙により国民の信頼を失っているカルザイ大統領の下では内乱対策戦略は実行し難いという認識がオバマ政権内に広がっている。
今オバマ政権内で力を盛り返していると思われるのは、バイデン副大統領の「パキスタン内のアル・カイーダを攻撃する」という案だ。これは「テロリスト対策」戦略である。今年3月にオバマ大統領はこのバイデン案を却下している。その理屈は「アル・カイーダを打ち負かすために、アメリカはタリバンがアフガニスタンで勢力を盛り返すことを阻止する」というものだったが、今その見直しを迫られている。
アメリカの軍部と諜報機関は「パキスタンのバルチスタン州の州都クエッタがタリバンの拠点となっている。そしてこのタリバンを支援しているのが、パキスタンの諜報機関であるインターサービス・インテリジェンスである。」としている。
もしオバマ政権がパキスタン内のテロリストをスポット的に攻撃する方向に戦略転換すると、アフガニスタンへの増員は必要なくなり、むしろ戦線縮小に向かうだろう。これは派遣軍の死者急増で厭戦気分が高まっているドイツやイタリアも歓迎するところだ。もっとも私にはパキスタン内のタリバン抑圧が必ずしも上手くいくとも思われないが。というのはタリバン達テロリスト集団は相当戦略に長けていて、戦線泥沼化を図り、アメリカや同盟国の疲弊と厭戦気分の高まりを狙っているからだ。
オバマ政権内でバイデン副大統領、ゲーツ国防長官、クリントン国務長官、ミューレン統合参謀本部議長らがアフガニスタン戦略の見直しを議論しているが、結論に至るには今しばらく時間がかかるということだ。オバマ大統領やクリントン国務長官の本音は「今本当に急場で忙しいのだから、同盟関係を堅持すると言うなら、命の危険がない給油位続けてくれ」というところだろう。もっともそんなことはどこにも書いてないが。