この前の文芸春秋に浜 矩子さんの「ユニクロ栄えて国滅ぶ」という小論文が出ていた。要は安いものばかり作っていると会社は儲かるが、国民経済的にデフレが進み、給料が下がり国が滅びるのではないか?という主張だ。この意見については別のブログで問題点を既に指摘した。http://blog.goo.ne.jp/sawanoshijin/d/20090915
私はユニクロとは時々Tシャツや速乾シャツを買う程度のお付き合いなので、特段当社を持ち上がる理由もないが、ユニクロを正しく評価するためにニューヨーク・タイムズに出ていた記事を紹介しようと思う。少し大袈裟だがユニクロのビジネス・モデルの中に私は日本企業が成長する一つのヒントはあると考えている。
タイムズによるとユニクロの決算は10月8日発表の予定で、多くのアナリストは同社予想の売上高6,800億円、利益520億円を上回る業績になると予想している。同社の株価は多くの小売業の株価が低迷する中で堅調でPERは21.35と高い。同社最大の株主で創業者の柳井氏はフォーブス誌のランクで日本一のお金持ちになった。
柳井氏のゴールは向こう10年間で売上を5兆円まで拡大することだ。5兆円というと競争相手のギャップ、H&Mやインディテックス(ブランドは”ザラ”)の売上を合計したよりも大きい。
ユニクロを経営するファースト・リテイリングの計画は野心的に見えるが、柳井社長は「日本だけでモノを売っている会社は最終的には日本でもモノを売ることができなくなる。企業は生き残るために世界に出て行かなければならない」という。何故なら人口減少により日本の国内市場は縮小を続けている上、その狭い市場に向かってH&Mのような強力な海外の競争相手が攻め込んできているからだ。規模の利益を生かしながら、ユニクロの目標である「安くてシック(Cheap chic)な」衣料を供給することが生き残り策なのだ。
ユニクロは10月1日にパリの一等地に2千平米の旗艦店を開く予定だ。世界のファッションの中心地にユニクロを開くというのは何とも鉄面皮な計画に思えるが、柳井社長は「ユニクロブランドの自然な拡大で自分のビジネススタイルだ」と考えている。
ユーロモニター・インターナショナル社の小売業アナリストのジョン・ライト氏は「ユニクロの価格構成はH&Mやザラと十分競争できるほど安い。高価格のブランドから中級品市場にトレード・ダウンする消費者を十分魅了するだろう」と分析している。
ユニクロは国内で若手社員に大きな仕事を任せて活力を引き出しているし、製造拠点の中国には優秀な邦人社員を派遣して低価格で質の高いモノ作りを監督させている。
このように見てくると、ユニクロのように品質と価格で世界的に競争力のある企業が海外に進出しながら、安くて良い商品を国内で提供し、若い社員の採用を増やしていく・・・ということは国を栄えさせると言えるのではないか?
そして老後資金の運用先を考えている中高年層はファースト・リテイリングの株を買ってユニクロの成長成果の一部を分けて貰う・・・ということになれば大団円なのだが、株のことだけはご自分でご判断頂くしかないだろう。良い会社だけれど高過ぎる株価とこともあれば、悪い会社だけれど安過ぎる株価というものもあるからだ。