金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

新しいリスク管理のアプローチ

2009年10月02日 | 金融

最近取引をしている証券会社から相次いで分厚い封筒が届いた。空けてみると「契約締結前交付書面集」などである。中を見ると「金融商品市場における相場その他の指標にかかる変動等により損失が生じるおそれがあります」などと当たり前のことが繰り返し書いてある。金融商品取引法や関連法令の改正に伴うものだろうが、証券会社も無駄なことに随分コストをかけるものである。そのコストをセーブして委託手数料を下げる等もっとダイレクトに顧客メリットを高める方法はないものだろうか?

もしリスクに言及するのであれば、もう少し具体的で投資家に役に立つリスク判断の物差を提供できないものだろうか?

そんなことを考えていた時、ファイナンシャル・タイムズのジョン・アーサー氏が「危機によりリスク管理に新しい叡智が生まれる」という記事を書いているのを読んだ。

同氏の意見のポイントは「伝統的な資産クラス(国内株だとか外国債券など)によるリスク管理ではなく、リスク特性により資産横断的にリスクを管理する」ということだろう。

伝統的なリスク管理は資産分散により、金利や株価の変動に対して、反対の動きをする資産を組み合わせてリスクをヘッジしようとするものだったが、今回の金融危機でこのような手法が必ずしも上手く機能しないことが明らかになった。例えば債券・株式などと相関性が相関性がないと従来考えられていたコモディティなどの代替資産が、実は上昇相場で相関性の高い動きを示したり、暴落相場では更に高い相関性を示したからだ。

債券ファンドの大手PimcoのEL-Erian氏は「興味深いことにリスク要素には伝統的な株式、債務不履行、金利、インフレ、流動性に加えて政策があることが分かった。好もうと好むまいと政府は市場を構成する要素となった」と述べている。

一世代前から現代ポートフォリオ理論研究の先端を行くウエルス・ファーゴは「代替リスクバジェット(予算)」というアイディアを提供している。

このアイディアは資産配分に際して9つのリスク要因の点からチェックすることを求めている。「集中リスク」(多くの投資家が同一の投資戦略を取って混みあっているリスク。市場が崩壊した時一斉に逃げ出すのでケガが大きくなる)

「レバレッジリスク」

「流動性リスク」(資産を換金したい時に速やかに妥当な値段で売ることができる可能性)

「透明性リスク」(仕組みが複雑過ぎて理解できない場合は非常に危険。ウオーレン・バフェットは訳が分からないものには投資しないと言っていた)

「株式市場全般に対する感応性リスク」

「債券市場に対する感応性リスク」

「イベント・リスク」(予期しないことが起きるリスク)

「ボラティリティ・リスク」(投資収益が変動するリスク)

「オペレーショナル・リスク」(事業計画未達成リスクなどを含む)

伝統的な資産クラスからリスク管理を行う意味がなくなりつつある原因の一つは経済のグローバル化だ。企業は国境を超えて活動し、国境を越えて競合する。

従って業種毎に最も競争力の強い企業に投資をする・・・というようなアイディアは、個人投資家にとって面白いと私は考えている。例えば三菱UFJ投信の「グローバル・トップ・プレーヤー」というのはこのアイディアを実行するファンドで興味はあるが、運用資産が小さ過ぎるので真面目に運用してくれるかどうか分からないので、手を出し兼ねているところだ。

コメント
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