金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

Lock-in(イディオム・シリーズ)

2009年10月19日 | 英語

Lock inは閉じ込めるという意味だ。クラウド・コンピューティングに関するエコノミスト誌の記事の中に次の文章が出ていた。First is the familiar risk of technological lock-in, as rival companies promote their own,mutually incompatible,standards and format, as they have done in the past.

「最初はおなじみの技術的ロックイン・リスクである。これは競合会社が過去にやったように自社固有で互換性のない規格やフォーマットを促進するリスクのことだ」

技術的ロックインあるいはベンダロックインVender lock-inとはシステム会社が独自仕様のシステムで顧客を囲い込むことである。囲い込まれた顧客は他の会社のシステムへ乗り換える負担が大きくなる。身近な例で考えるとある年賀状システムを使って住所管理を行っている場合、データ移行の手間から同じシステムの後続版を買い続けることなどなどだ。

クラウド・コンピューティングは、ユーザが自分でコンピュータのハード・ソフトを持たずに、巨大システム会社のハード・ソフトを利用する仕組みで、コスト・運用面でメリットが大きいが3つのリスクがあることに留意するべきだとエコノミスト誌は述べている。最初のリスクが「技術的ロックイン・リスク」だ。次のリスクが「個人情報が利用されるリスク」だ。無料でクラウド・コンピューティングを使う替わりに、個人情報の使用を許可するという同意を与えると、個人情報は広告活動に使われる。

最後は巨大システム会社のシステムといえども、運用が一時的に停止されたり、最悪の場合は蓄積したデータが消滅するリスクだ。今月マイクロソフトの子会社Dager(「危険」という名前がいけなかったのか?)で、住所録やカレンダーが消滅した例がある。詳しくはこちら→

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091013AT2M1300C13102009.html

もっとも自分のパソコンもクラッシュしてハードディスクの中の貴重な情報を失うことはあるから、バックアップというものは常に必要なのかもしれない。

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中国の成長を妨げる三つのリスク

2009年10月19日 | 国際・政治

今英米の一流紙の国際経済面を一番賑わせているのは中国関連の記事だ。リセッションにあえぐ先進国は中国など発展途上国の成長エンジンが頼みだからだ。今のまま行くと中国は来年、為替レートベースのGDPで日本を抜く予定だ(購買力平価ベースではかなり前に抜いている)。その次はかなり先になるが、いつ中国のGDPが米国を抜くか?ということが大きな関心事になるだろう。中国が米国の3倍を上回る今の成長率を持続するならば、20年程度で中国は米国を抜くかもしれない。

だが米国の国際問題に関する有力シンクタンク・外交問題評議会のSteven Dunaway氏は3つの理由をあげて中国の成長が頓挫する危険性を指摘している。

第一のリスクは「現在の投資牽引・輸出牽引型の経済成長が頭打ちを迎える」リスクだ。中国は積極的な財政投資でリーマンショック後も経済成長を持続させているが、先進国の経済成長は向こう10年程度低いので、中国も息切れしてくるということだ。

第二のリスクは「法の支配の未成熟が経済成長の足を引っ張る」リスクだ。経済活動を行う上で企業と個人にとって、経済活動の準備には予見性が必要であり、契約と所有権が効果的に保護されていることが重要だ。

経済発展の初期段階では、これらの政治的不安定要因は投資に対するハイリターンで相殺されていると考えられてきた。しかし経済発展とともに「特別な関係をベースにした利益供与」は困難になっている。

第三のリスクは「中国政府の弱さ」リスクだ。中国の主な経済政策は国務院で決定される。国務院は各省大臣や共産党幹部を含む約50名で構成されているが、各派閥の利害関係が対立するので、大きな経済改革について合意に至ることは困難である。従って現在の政策を踏襲する傾向が強く改革へのステップは小さい。

更に市場型経済の一層の発展が共産党一党支配を望む共産党の考えと両立するかどうか不透明だ。

過去経済成長を遂げた韓国・シンガポール・台湾などのアジア諸国では一党支配の時期が長かったが、経済と政治を分離することで経済成長を持続させた。しかし中国では共産党は経済のコントロールを手放したがらないように見える。

☆  ☆  ☆

Dunaway氏は以上3つの点を指摘し、一般的には中国は世界最大の経済になると信じられているけれども、現在の政策が維持されていると数年の内に大きくつまづくリスクがあると述べる。このレポートは中国の内需拡大や外国企業の中国進出を求める米国政府の主張に正当性を与えるべく書かれた要素が強いと判断されるが、中国のリスクに関する認識は正しいだろう。

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