今日の午後、市場に住信と中央三井が2011年春を目処に経営統合をするという観測記事が流れ、両行の株式は売買停止になった。朝日新聞(ネット)によると新社名は「三井住友」ということだ。穿った見方をすると次に三井住友フィナンシャルGとの統合を進めるための新社名かもしれない。
以前から統合のうわさのあった両行だが、もし今回統合に向かうとするとそのドライビング・フォースは何か?と考えてみることは経済学的に興味深い作業だ。
順不同でその背景を考えてみよう。
第一はやはり「大きくないと生き残りにくい」ということだろう。Too big to failということは米国発の金融危機で身近に見たこと。このブログでも書いたが、米国では今年既に100の地銀が破綻しており、更に数百の予備軍が控えている。金融システム全般に与える影響が小さい銀行には国が救済の手を差し伸べない。新しい自己資本規制の動きは判然としないが、かなり高いハードルとなると推測される。自己資本は質、比率ととも絶対量が必要だろう。自己資本に関連して言うと中央三井にとって政府が保有する普通株の買入消却(あるいは民間株主へ譲渡)が経営の柔軟性を確保する上で大きな課題になっている。しかし金融機関の増資競争が激化する中で、これらの資本政策の実施が難しくなっていることもドライビング・フォースになっているとも考えられる。
第二は「縮小する国内市場のパイの取り合いを止める」ということだ。信託銀行の大きな資金源は退職金市場だった。しかし団塊の世代の退職とともにこの市場は縮小する。また信託銀行の顧客基盤である比較的裕福な高齢者層も今後、資金を流出させる。企業与信についても設備投資の低迷から向こう数年は低迷するし、不動産市場の急速な回復も望みにくい。このように縮小する市場で競争するよりは、競争相手と統合する・・・という考え方は戦略的に正しいだろう。
第三は「銀行における団塊の世代の退職」だ。高度成長期に大量に採用した社員が退職しつつあり、現在はオイルショック後採用した社員が役員・幹部になっている。この年代は採用数が少なかったので、経営統合してもそこそこのポストを配布できると推測される。
第四は「日本の金融業務で比較的収益性があると考えれれる資産運用業務で住信の優位性が確定した」ことだ。住信は今年の7月に日興アセットマネジメントを買収した。これでメガバンクに拮抗する預かり資産を手にしたがこの優位性は大きい。なお資産運用業務は比較的収益性があると考えれると書いたが、それがいつまで続くか?ということに私は疑問を感じている。資産運用に知見を持つ個人投資家は上場型投信のように低コストで流動性の高い資産運用を目指すので「資産運用神話」がどこまで続くか疑問だ。勝手な想像を働かすと日興コーディアルを買収した三井住友フィナンシャルGと経営統合することで証券業務の一気通貫が完成すると考えている人もいるかもしれない。
第五として金融庁の思惑が影響しているのではないか?という想像を禁じえない。中央三井に対して金融庁は業務改善命令を7月に発出している(詳細は不明だが同行は9月に改善計画を提出している)。金融庁が金融システムの安定を目指してより強い金融機関の創出意図を持っていることは想像しうるところだ。
まあいずれにせよ、これは金融再編の一つのプレリュードになりそうだ。