金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

電子書籍キンドルは世界に飛び出す

2009年10月07日 | デジタル・インターネット

アマゾンは昨日キンドル(電子書籍)の新しいバージョンをまもなく発売すると発表した。キンドルは書籍を無線でダウンロードすることができる道具だ。新しいキンドルの特徴は米国以外の100ケ国以上の国でもコンテンツをダウンロードできることだ。日本では10月19日から出荷が予定されている。

ニューヨーク・タイムズによると、新しいキンドルは旧バージョンと外見(6インチのスクリーン)は同じだが、従来と異なりAT&Tのワイヤレス・ネットワークを使い(従来はスプリントのネットワーク、スプリントはローミングが弱かった)、海外でのダウンロードを可能にしたことだ。

新キンドルの値段は279ドル。創業者兼CEOのJeffrey P. Bezos氏は「我々は常時数百万冊の英語の本を非英語圏に輸出している」「彼らは新キンドルを手にすると、60秒で本の内容をダウンロードできる」と述べている。

海外の新キンドルユーザーは約20万冊!の英語の本をキンドル経由で購入することが可能になる。

キンドルがどれ位売れているか正確な数字は不明だが、調査会社Forresterは2009年の電子書籍の販売見通しを従来の2百万台から3百万台に引き上げた。

Bezos氏はキンドル経由でダウンロードできる本はアマゾンがペーパーベース・電子ベースで販売する本の48%に到達しているという。

☆    ☆    ☆

アマゾン ジャパンによると「将来的には日本語のデジタル書籍を扱いたいと思うが具体的な計画はない」という。

電子書籍キンドルの与える影響をデジタル書籍のない日本との対比で少し考えてみよう。まずキンドルを利用することで、英語で書かれた本は「安く即時に」世界100カ国で販売されるということになる。本が読まれるということはそのコンテンツが読まれるということで、コンテンツは有形・無形に人々の考え方や嗜好に影響を与える。ということはキンドルとともに「英語圏文化」がますます世界に広がるということだ(無論非英語圏の人間が英語で本を書くこともあるだろうが)。英語の優位性はますます強まるだろう。

キンドルを使うことができる英語圏の人はそれ以外の国の人に較べて、「安く速く」本=情報・知識を手に入れることができる。ということは情報と知識において優位に立てるということだ。日本もどこかで本のデジタル化に取り組まないと競争力を失うのではないだろうか?

次にハードウエアとしてのキンドルはソニーなどの競争相手を持つが、本というコンテンツを押さえるアマゾンの絶対的優位は動かないということだ。アマゾン恐るべし。

☆   ☆   ☆

さて私がすぐキンドルを買うか?というとまだ決めていない。理由は簡単、60秒で本をダウンロード出来ても、英語の本を読むには骨が折れるので買ったところでホコリを被ってオシマイというリスクがあるからだ。

ただ内緒(もしこのブログを見ると困るが・・・)だが、娘にはクリスマス・プレゼントとして買ってやろうかな?とは考えている。この点だけからいうと1ドル80円位の円高が来ると助かるのだが・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

投資に役立つブログサイト

2009年10月07日 | 株式

数日前の日経新聞に「一般人がETFに投資しながら、専門家並のブログを書いている・・」という主旨の記事が出ていた。

確かに色々投資に役に立つサイトはあるようだが、私は時間もないし、ディトレーダーでもないのでそれ程見ていない。そんな中で最近「便利だなぁ」と思うサイトを偶然見つけた。

サイトの名前はEverybody gets what they want http://ngtn.blogspot.com/ 。

内外の株式市場の動きとその解説に加え、ファイナンシャルタイムズの記事やクルーグマンやルービニ教授のコメント(いずれも英語)を紹介しているので、ざっと目を通すに便利なサイトだ。

ブログではないが「みんなの株式」というサイト(これはマスチューンという会社が運営している)http://minkabu.jp/も面白い。「18万人超の個人投資家による売り・買い銘柄予測」など短期取引をする人には面白いだろう。

話はEverybodyの方に戻るが、同ブログにインフォシスInfosysに関するウオール・ストリート・ジャーナルWSJの記事が出ていた。この記事は昨日読んでいたが再び目にしたので、ちょっとコメントを書こう。

何についてのコメントか?というと「リスクの所在」ということに関するコメントだ。インフォシスはタタ・コンサルタンシーなどと並ぶインドを代表するIT企業だ。インフォシスはナスダックに預託証券を上場しているので、米国内でドルで投資することができる。私も2年程前にインフォシスの預託証券を買い今も保有している(高値で買ったので、値戻りを待っている状態。にが笑)。幸いなことに株価の戻りは堅調で、1年前から61.18%上昇している。同期間のダウが-8.42%だからパフォーマンスはかなり良い。因みに過去5年間で見ても、ダウが-5.82%なのに較べてインフォシスは68.8%上昇しているからパフォーマンスは良好だ。

「インフォシスの米ドル預託証券に投資する」リスクは何なのか?という本題に戻ろう。

まずインフォシスの業績リスクがある。インフォシスの業務は米国や欧州企業のIT部門のアウトソースを受けているから、アウトソースを行う欧米企業特に金融機関等の業績に大きく左右される。実際リーマンショック以降インフォシスの株価は急落した。この点から見るとインフォシスはインドの企業ながら、業績リスクは発注先である先進国の企業業績と連動性が高いといえる。

またインフォシスはインド内の同業タタ・コンサルタンシーなどと競合する他、それ以外の人件費等コストの安い発展途上国のIT企業とも潜在的に競合する。また最近は「IT部門の下請」だけではなく、もっと大規模なIT全般の受託やクラウド・コンピューティングまで視野に入れているのでIBMのような米国のIT企業とも競合する。インド経済が成長すると人件費が相対的に高くなり、IT企業の競争力は長期的には低下するので、それを上回る付加価値を生み出せるかどうかがポイントだろう。

為替リスクについていうと、米ドル預託証券を日本から投資するので、ドル円の為替リスクが存在する上、インド・ルピーと米ドル(アウトソース代金の支払)の為替リスクもある。

このようなリスクは国際的企業に投資する場合はつきものだ。例えば日本の自動車メーカーの主な収益源が北米にあったことを思うと、日本の自動車メーカーの株価リスクは米国の景気リスクだったと極言できるだろう。また今後発展途上国が大きな市場となると、発展途上国の自動車購買力そのものがリスクなのかもしれない。

こう考えると株式リスクを「日本株」とか「米国株」といった国境で分けることや「先進国」とか「発展途上国」という経済の発展ステージで分けることはそれ程重要でないような気がしてくる。

尽きるところ個別の投資銘柄がどのようなリスクを背負っているか一つ一つ見ていくということなのだろうか?

だがこれは一般人には限界があるので、我々はグローバルなインデックス投資を行う方がベターということになりそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

増資圧力で日本株低迷

2009年10月07日 | 株式

3月のボトムから37%程度上昇した日本株だが、野村證券等の大型増資で需給が悪化、相場は重たくなっている。増資銘柄の中には10月5日に増資を発表したマツダのように、市場が資金使途を評価して急騰(発表翌日に株価は7.5%上昇)した銘柄もあるが、全般的には希釈化が敬遠されている。

ファイナンシャル・タイムズ(FT)は調査会社ディーロジックのデータを紹介しているが、それによると今年347億ドル(約3兆1千億円)の増資(IPOを含む)が行われた。増資が多いセクターは金融で259億ドル(内野村證券は48億ドル)で、次が電子機器の46億ドルだ。この増資は史上最大規模で、来年3月に向けて更に増資が続きそうだ。

日興アセットのチーフ・ストラテジスト・Vail氏によると「日本企業の多くの社長は二番底を予想しているので、その前に増資を行いたいと考えている」ということだ。増資により自己資本を強化すると銀行借入や債券発行のコストを下げることができるからだ。

金融機関については今後の自己資本規制強化、特に普通株自己資本比率規制をにらんで多くの会社が増資のタイミングを狙っている。

この需給の悪化が日本株相場の重しとなるとみるストラテジストは多いようだ。

クラウゼビッツに「戦略的誤りを戦術的に覆すことはできない」という言葉がある。戦術=資産配分、戦略=個別銘柄選択、とするとこれは資産運用に関しても至言である。

日本株への資産配分比率という戦略を誤ると、個別銘柄選択の巧拙ではカバーできないということになるだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする