今日(10月14日)中国政府が発表した貿易統計によると、中国の輸出入の回復振りは顕著だ。9月の輸出は前年同月比-15.2%で8月の-23.4%から大幅に改善している。より顕著なのは輸入だ。9月の輸入は前年同月比-3.5%(8月は-17%)、これは内需が堅調なことを示している。
だが世界の目は不景気の中で一人勝ちの様相を示す中国の輸出産業に注がれている。無論中国も世界的な景気後退の影響を受けて、今年前半の輸出は前年比22%減少しているが、ドイツの-34%、日本の37%、アメリカの-24%に較べると減少幅は小さい。
ニューヨーク・タイムズによると、中国は日本、イタリア、カナダ、メキシコ、中央アメリカなどのシェアを食って輸出シェアを伸ばしている。中国には「二本足で食べないものは両親だけ。四本足で食べないものは机だけ」という諺があるがまさにあらゆる分野で競争相手のシェアを食いまくっているって感じだ。
カナダは米国の最大に輸入先だったが、今年中国がその地位を奪った。中国のシェアは昨年の15%から19%に伸び、カナダのシェアは17%から14.5%に減少した。中国が輸出で強い競争力を発揮できる理由は良く言えば非常に柔軟な労働市場、悪くいうといつでも首にできる安価な労働力を大量に抱えているからだ。
中国は輸出シェアを伸ばしているとはいえ、価格面では徹底的に叩かれている。例えば中国から欧州や米国に輸出するジーンズは一着7ドルが妥当な価格だが、2.85ドルまで叩かれている。
こうなると中国は世界にデフレを輸出しているようなものだ。中国の輸出競争力の源泉は安い労働力に加えて、安い人民元と政府の輸出産業に対する手厚い援助(税制面の優遇、低金利融資)だ。人民元は2005年に対ドルで切り上げられたが、その後また米ドルにペグしている。ドルはこの1年で対ユーロで15%下落しているので、中国は欧州諸国に対して為替面で非常に有利な立場にある。
一方中国の富裕層が欧米の高級品の購入を増やしてることも事実だ。マクロ的に見ると中国は低所得者層を犠牲にすることで、輸出競争力を高め、稼いだ外貨の一部で富裕層が欧米の高級品を買うという構図だろう。
中国で「国民の所得格差是正」と人民元の水準訂正が行われない限り、中国の進撃は続きそうだ。