ニューヨーク・タイムズにRising debt a threat to Japanese Economyという記事が出ていた。主旨は次のとおりだ。米国では財政赤字の結果、国債はGDPの98%近くに膨らんでいる。しかし日本では国債はGDPの2倍に近づいている。米国の国債利払い費用は国家予算の10分の1だったが、2008年の日本の国債利払い費用は国家予算の5分の1だった。
神経質な投資家は財政悪化が究極的には国債の債務不履行に陥るか円の価値が崩壊するのではないかという懸念を抱いている。最近藤井財務相が国債の供給過剰感があると述べたことで、国債利回りは半年間で一番高くなった(価格は下落)。
民主党政権が政権公約を実行しようとするため、来年の国債発行額は戦後はじめて税収を上回ると予想される。
クレディ・スイスの円債ストラテジストの福永氏は「日本は今年、来年とより多くの国債を発行しようとしている。しかしこれは3年から5年先には機能しなくなるだろう」と述べている。またバークレーズ・キャピタルの森田チーフ・ストラテジストは「税収が落ちている中で民主党政府が総ての政策を推し進めることは危険だ」「世界的な視点から見ると、日本の債務比率は完全に航路を逸脱している」と述べる。
しかし政府関係者は幾つかの点で日本は米国より良いと主張している。何故なら日本の国債は9割以上が国内の投資家によって保有されているからだ(米国では54%程度が国内で保有されている)。銀行、年金基金、生命保険会社のような安定した投資家が国債を保有しているので、突然国債が売りまくられることはないという訳だ。
多くのアナリストは、政府は景気後退期において債務を削減することに余り頭を悩ますことはないが、支出をコントロール可能な範囲におくことに集中するべきだと述べる。
何故なら長期的には日本の貯蓄過剰な状態は、高齢者の資産食い潰しと政府の医療費・年金支払増加により、続かなくなりやがて貯蓄不足の状況になる可能性があるからだ。
こうなると国債の金利は急上昇し、利払いコストがかさむことでで、日本の国債がデフォルトになるリスクが高まる。最悪の事態は投資家が円資産から海外資産に逃避することで円が売られ円の価値が下落することが予想される。
最近数ヶ月米ドルの価値が下落したことで円高になっているが、これは円の安全性に対する誤った感覚をもたらしているかもしれない。バークレーズの森田氏は「10年か20年の内に日本の経常収支は赤字に転じ、円安になる。しかし投資家はその前に円に悲観的になるので円安はそれよりも早く始まる」と述べる。
第一生命経済研究所の熊野主任エコノミストは「円は長期的な下落過程に入ろうとしている。日本の金融と経済の状況を考えると最近の円高は最後の円高かもしれない」と述べている。
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ところで昨日「郵政見直しの閣議決定」と「西川郵政社長の辞任」があった。穿った見方をすると、郵便貯金を政府の保護下に置くことで、国民から集めた貯金で国債を購入するという仕組みを持続させることで赤字国債の消化を図ろうという意図かもしれない。
昨日亀井郵政担当相がファイナンシャル・タイムズに「これからは郵貯の運用として内外のコーポレート・ファイナンスも行いたい」と話をしていたが、これはホラ話以外の何者でもない。郵貯のスタッフにそのようなことができる能力は全くないからだ。
民主党政権の本音は郵貯の民営化を無期延期して郵貯の資金で財政赤字をまかないながら、ばら撒き予算を組んで次の選挙に勝ちたいということではないだろうか?
このように考えると先読みする投資家~私のような個人投資家を含めて~は、この円高局面(円はドルに対しては高いが他の通貨に対してそれ程高くはないが)を利用して、円資産から海外資産へのシフトを図るだろう。このような動きが強まると巨額の赤字国債のロールオーバーで長期金利が上昇するというシナリオはかなり説得性があると思われる。問題はその時期がいつなのか・・ということだが。