10月8日の日経新聞によると「政府は中小・零細企業などを対象とした債務の返済猶予制度に関連し、不良債権基準を緩和する方向で調整に入った」ということだ。
本当にこんなことをしていて良いのだろうか?
「返済猶予債権」について完全に国が保証を行うのであれば、「優良保証」であるから正常債権と分類して良いだろう。だが国の完全な保証なしに「金融検査マニュアル」だけを弾力化しても事実上の不良債権は不良債権なのである。
金融機関の取引相手(預金者や他の金融機関)や格付機関・調査機関などは「返済猶予債権」という名前の不良債権をポートフォリオの中の時限爆弾として探すにことになるだろう。
ところで「返済猶予支援論者」の中には「銀行がバブル崩壊で不良債権で苦しんだ時には公的資金を投入したのだから、今回は中小企業を救済して当然だ」という意見がある。この点については少しコメントをしたい。
当時一部の銀行の一部の人がバブルに踊って不良債権を増やしたことは事実だが、その後不良債権の貸倒償却を当時の大蔵省が中々認めなかったことが不良債権の処理を遅らせたこともまた事実なのだ(その理由は護送船団方式の維持や銀行からの税金徴収ということである)。
そのような反省を踏まえて金融再生プログラムの中で「資産査定の厳格化」、「自己資本の充実」、「ガバナンスの強化」という三本柱が定められた訳だ。
ところがもし国の保証を付けないで査定基準だけで不良債権を正常債権と扱うようなことが大々的に行われるとこれは完全に古き悪しき時代への逆行である。
だが今回の返済猶予議論で一番欠けている視点は「一時的に資金繰りを楽にしても事業に将来性がない限り問題の先送りにしかならず、問題の先送りは問題を大きくすることにしかならない」という点だ。
本質的な解決は「今は苦しいが技術面等で将来性のある中小企業には国の保証とともに商売が増えるような仕組みを作る」ことと「将来性のない中小企業には支援を与えながら転廃業を促進する」というのが、人気はないかもしれないが「本当の政治」だと私は考えている。