金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ブラジル、借入人が貸し手に回る時

2009年10月13日 | 金融

最近ではブラジル投資が個人投資家の間でも話題のようだ。今日の日経ヴェリタスもエマージング市場におけるETF投資などを冒頭の記事にしていた。

BRICS(中国、インド、ロシア、ブラジル)投資の中で、日本人投資家から見て先行していたのは中国が一番、ついてインドだろう。これは経済規模や発展速度に加えて、地理的・歴史的親密感によるところが大きい。加えて「国の格付」が投資適格であるかどうかも、機関投資家にとっては大きな要素だったろう。ブラジル以外の国は投資適格格付(つまりBBB各以上)だったが、ブラジルについては先月ムーディーズがソブリン格付をBaa3(投資適格の一番下)に引き上げたことで漸く三大格付機関から投資適格のお墨付きを貰うことができた。ムーディーズの格上効果は機関投資家の資金流入という観点から意味が大きいと私は見ている。

だが私にとって印象深いことは、長年IMFからお金を借りる立場にあったブラジルが最近IMFに100億ドルのローンを供与する契約書を締結したという記事を目にしたことだ。これはBRICSがIMFに対し総額800億ドルのローンを供与するプランの一環ということだ。昔ブラジルが資金繰りに四苦八苦していたことを思うと隔日の感だ。

経済成長の結果、長年の借入人が貸し手になり、次の発展途上国を支援する。麗しい話ではないか。

ところで雑誌や新聞はETFを使って低コストの投資ができるように書くが二つの盲点があることに注意しておこう。一つは米国株式(ETFも米国株式)の取引の場合、1取引で25ドル+消費税(マネックス証券の場合)の手数料がかかることだ。取引コスト比率を下げるためには、一回の取引量を大きくする必要がある。毎月1,2万円外国ETFを買うというような投資はコスト倒れになるということだ。

次に「買いの成行」取引では、時価の1.5倍の資金を必要とする、逆にいうと口座にある外貨残高の67%程度の株数しか証券会社(マネックス証券の場合だが)が注文を受け付けないという点だ。無論日本時間の午後11時頃まで起きていて、場を見ながら指値注文をすると口座残高範囲で取引は可能だ。

まあ、このような細かい不便はあるが、今のブラジルには伸びる活力があり投資マインドをかき立てることは確かだ。

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オバマ、日本の英語の先生になる

2009年10月13日 | 英語

ニューヨーク・タイムズにObama becomes Japan's English Teacherという記事が出ていた。話は神奈川県のある美容室がバックグラウンド・ミュージックにオバマ大統領の就任演説のCDを使い出したというところからスタートする。

オバマの演説集は昨年11月以降50万部売れている。これをもってタイムズは「オバマは日本の英語の先生」とした訳だ。ノーベル平和賞受賞でオバマのCD付「核なき世界」などは益々売れるだろう。朝日出版社のHPはこちら→http://www.asahipress.com/bookdetail_lang/9784255004884/

オバマの演説集が売れる理由は何か?タイムズによると英語を勉強した人を含めて大方の日本人にとってネイティブ・スピーカーの演説を理解することは難しいようだ。しかしオバマの演説は発音が明瞭でゆっくりしているから理解しやすいとコミュニケーションの専門家・二階堂教授はいう。

更にオバマの演説集を出版している朝日出版社の山本編集長は「オバマの演説内容を理解できない人でもオバマの演説を聞くと鼓舞される」という。実際読者の中には「聞き取れたのはYes, we can」だけという人もいるということだ。こうなると演説集は一種の音楽だ。

これは仏教のお経のようなものでもある。お坊さんの唱えるお経を聞いてそのコンテンツを全部理解することは不可能だ。だがじっくり聞いていると少し分かるところがあり、それを頼りに推測を働かせながら、打ち寄せる波のような読経を聞いているとある種の精神の安定を覚えることがある。これと共通した効果がオバマの演説にはあるようだ。

もっともお経が精神の安定をもたらすのに対して、オバマの演説は精神の高揚をもたらす。

タイムズはオバマの演説が日本で人気がある理由の一つは「国民が人々を鼓舞するような演説をする指導者を求めているからだ」という意見を紹介している。日本人は長いこと感動させるような演説やコミュニケーションを重視してこなかったが、変化の兆しが出ているのかもしれない。

民主主義における優れたリーダーの淵源をローマ時代にまで遡ると「肉体の健全、知性、類まれなる寛容、持続する意思、説得力、古来この徳性を兼ね備えた人物はジュリアス・シーザーしかいない」というイタリアの教科書の文章を思い起こす(塩野七生さんの孫引き)。

オバマをシーザーにたとえるつもりはないが、オバマの中にシーザーが持っていた徳性の幾つかが見えることは確かだ。

私はまだオバマの演説集を持っていないが、安いものだしこの際買ってみようかな?と思い始めている。完全に理解できなくても、CDを聞いて元気を貰える・・・と考えると気も楽になるから。

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