エコノミスト誌に「日本の新聞、よろめく巨人」という記事が出ていた。記事のサブタイトルは「日本の日本の新聞(の経営)は見た目より悪い」である。気にかかる記事だ。何故かと言うと日本の新聞社の経営が苦しくなっていることは、周知の事実なのに何故この時期にあえて取り上げたのか?どこか破綻しそうな新聞社でもあるのか?と思うからだ。この疑問についてはエコノミスト誌の記事に投稿しようと考えている。
それはさておきこの機会に日本の新聞の状況を少し見ておく。これは私のビジネスにも役立つ。
まず発行部数とその推移。日本新聞協会のデータhttp://www.pressnet.or.jp/によると、2009年の発行部数(朝刊・夕刊ワンセットでカウント)は、50,352千部。99年の発行部数が53,757千部だから10年間で6.3%減少した。新聞の発行部数の減少は先進国が抱える共通の悩みだ。例えば米国では2008年から09年の間に発行部数は10.6%減少している。これに較べると日本の発行部数の落ち方は緩やかである。もっともこの緩やかさが日本の新聞を「ゆで蛙」にしているともいえる。
日本の新聞経営の上で大きな問題は「若年層の新聞離れ」と「広告収入の減少」だ。
世代別の新聞購読者の比率はエコノミスト誌のデータによると、40代、50代、60代以上では8割を超えるが、30代では6割強で20代では5割程度となっている。エコノミスト誌は現在のところ団塊の世代が新聞を支えているが、世代が替わると新聞の購読は破綻するだろうと予想を述べている。
広告収入について新聞協会のデータを見ると、2008年の新聞業界の総売上高は2兆1,400億円で販売収入は1兆2,308億円、広告収入は5,655億円。広告収入の比率は26.4%だ。因みに10年前の98年の総売上高は2兆4,848億円、販売収入は1兆2,927億円、広告収入は8,584億円だ。広告収入の比率は34.6%だ。10年間で販売収入は619億円の減少にとどまっているが、広告収入は2,929億円も減少した。
この収入源に新聞業界はどう対応しているのか?という点についてエコノミスト誌は新聞協会の富田氏の「印刷工場の現代化でコスト削減を図っている」というコメントを紹介している。印刷工場の共有化などの合理化策も進んでいる。
余談になるが、過去に倒産したことのある毎日新聞は、印刷を担当する子会社「東日印刷」で聖教新聞の印刷を請け負っている。このことをもって毎日は創価学会に頭が上がらないという人もいるようだ。もっとも東日印刷はスポーツニッポン、東京スポーツなどの印刷も行っているので、創価学会に頭が上がらないというのは穿ちすぎかもしれない。
日本は新聞大国である。新聞協会のデータによると、日本を上回る発行部数を持つ国は中国とインドだけだ。米国ですら日本より新聞の発行部数が少ない。
この発行部数を支えてきたのは、販売代理店のネットワークとセールスパワーである。一方この販売代理店は新聞の電子化を進める上で大きな障害になっていることも事実だ。環境が変わると強みが弱みに変わるという一例だろう。
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若い人が新聞を読まなくなったといえば、私が通勤に使っている西武新宿線では朝から漫画本を読んでいる男性が目に付くことがある。若い人だけでなく、少し髪が薄くなった人まで朝から漫画を読んでいるのは気になることだ。
紙の新聞の替わりにパソコンや携帯電話からニュースを読むのであれば問題はないが、もし世の中のことに関心を失った人が増えているとすれば、これは新聞業界だけの問題ではなく、国の根幹に関わる問題である。私はそのことに懸念を覚えている。