金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

トヨタのリコールはエコ補助金差別の仕返し?

2010年02月10日 | 社会・経済

新聞に週刊新潮の記事見出しが出ていた。トップが「普天間の仇をリコールで!トヨタは生贄というアメリカ謀略・・・カナダ紙が報じた」である。カナダの新聞が「トヨタのリコール、アメリカ仕返し説」を書いていたことは知っていたが実物は読んでいないし、特に読もうとは思わない。

今日米政府の関係は普天間基地問題や日本のインド洋給油支援の取り止めでギクシャクしているが、アメリカのトヨタユーザーの多くがそのこととアクセルやブレーキの問題を結びつけるほど外交問題に敏感とは思わない。

むしろGMやフォードの車が日本のエコカー補助金の対象外になっていることに対し、米国の自動車メーカーがトヨタのリコールを煽っているという話の方が現実味がある。もっとも確たる証拠のある話ではないが。

FTは「観察者達は議会のトヨタに対する反発は反外国的な動きの兆候が見られると述べているが、トヨタのルーツが日本であることが問題になっている証拠はほとんどない」と報じ、外国企業の米国子会社のためにロビー活動を行う組織のナンシー女史の「トヨタの現在の問題に関する懸念が外国嫌いの中で起きているというのは正確ではない」という言葉を紹介している。

もっともFTはその後で「そうはいっても多くのアメリカ人はトヨタや他のアジアの自動車会社がデトロイトのシェアを奪っていることをうらみに思っている。GMやフォードは日本のエコカー補助金に対する抗議の旗を振っている」と報じている。

このエコカー補助金の問題だが、この記事だけを見ると恣意的に外車を排除しているように見えるが「大部分の外車は燃費基準はOKだが、排ガス基準を満たさない」ためエコカー補助の対象にならないというものだ。排ガス基準を満たせない米国の車がそのことを伏せて旗を振るうのはフェアではないだろう。

ワシントンポストによるとトヨタは積極的なロビー活動を始めた。トヨタは全米から23人の従業員をワシントンに集め、トヨタ車を運転させ彼等にアクセルの問題を感じたかどうか発表させている。結果問題を感じたという人はいないようだ。これは議員達に好印象を与えるためにアピール活動である。

トヨタとそのディーラーは全米で17万人の従業員を持ち、南部諸州の経済に大きな影響を与える会社であり、政治的にも強い支持団体を持っている。普天間やエコカー補助金の仇を米国が組織的に行っているとは考えられないと私は思っている。

トヨタの問題はアクセルやブレーキに問題が出た時の初期動作が悪かったことを米国のマスコミが叩いているというのが実情だろう。もっともGMを抜いてトップランナーになったトヨタへの風当たりは強い。

トヨタがロビー活動で早期に挽回を図ることができるかどうか?これからが正念場である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子供手当てを減らし専門教育の充実を

2010年02月10日 | 社会・経済

私はかねてから民主党の「子供手当て」について反対を唱えている。子供手当てを減らして「保育施設を充実させる」という社民党の主張の方がまだ良いと考えている。私の基本的は主張は日本の競争力を維持するために、高等教育を充実させ、台頭する中国やインドに対抗できる各分野のエキスパートを育成し、国と経済を牽引させるべきだというものだ。

発展途上国からは絶え間なく安い労働力が先進国に流入する。中国では毎年1千万人以上の安価な労働力が農村部から沿岸部の工業地帯へ流れこんでいる。先進国の労働者はこの安価な労働力と競合せざるを得ない。

今日(2月10日)の日経新聞朝刊「雇用創出・米国の苦悩」の中に、昨年プリンストン大のブラインダー教授の書いた「米国の雇用の25%は海外に流出するかもしれない」という論文が話題を呼んだという話が出ていた。海外の安価な労働力との競争に喘いでいるには製造業だけではない。情報技術の発展は保険業等のミドル・バックオフィス業務の海外アウトソーシングを加速させている。

この現実を受けてオバマ大統領は「高校を卒業しただけでは、もはや良い仕事には就けない」と一般教書演説の中で言い放っている。専門的な能力がないと海外の労働者との競争に勝てないということだ。

教育において大事なことは単に人を育てることではなく、社会に出てちゃんと稼ぎ、稼ぎの中から税金と社会保険料を払う人間を育てることである。できれば沢山稼いでくれる人を育てたい。何故なら沢山稼ぐ人は沢山税金と社会保険料を払うからだ。その税金と社会保険料が高齢化する日本を支える。それ故に教育は投資なのである。

「子供手当ての乗数効果は?」という自民党議員の質問に対し、菅財務相は乗数効果について知らなかったためシドロモドロになったという新聞記事があった。知らない菅財務相も問題だが、子供手当てを短期的な経済効果で図るという質問者の目線も低いといわざるを得ない。

教育への投資は長期投資なので今日明日の経済への波及効果を云々すると国家の大計を誤る。

繰り返しになるが、教育への国家の投資とは役に立つ人間を作ることである。極論をすると馬鹿にまで投資をする必要はないのである。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする