今日(2月23日)のFTを見ると珍しく日本のニュースが沢山出ていた。もっとも「GDPで中国が日本を抜くのに対して日本はどう感じているか?」などという埋め草的な話が多かったが。
その中に日本の財務省の国債管理チームが今週欧州の投資家まわりをしているという記事があった。
記事は「日本の国債の95%は国内で保有されていて、ベンチマークの10年債の利回りは取るに足らない程の1.34%という利回りだ。ギリシア危機が国債投資家を揺さぶっているこの時期にどうして財務省の役人がくる必要があるのだろう」という疑問からスタートし、それには十分な理由があるのだと続ける。
FTの分析によると、最大の投資家である郵貯・簡保は国債の購入を続けているが、その市場シェアは2008年9月に29%というピークをつけ、その後1%近く下落している。
2001年の財政投融資制度改革により、郵便貯金や公的年金基金の資金は、大蔵省(当時)の資金運用部の預託から市場運用に切り替わった。郵貯の国債マーケットのシェアは2001年の6%から郵貯銀行が独立した2007年の20%に上昇している。FTによると2009年末の郵貯の運用資産に占める国債の比率は81%まで上昇している(2008年3月は74%)が、市場シェアは下落している。これは郵貯の残高が減少しているからだ。郵貯の残高は2008年3月から8%下落している。また2010年は大量の定額預金の満期を迎える。
亀井大臣が郵貯ポートフォリオの分散を提起していることも国債投資家には気になるところだ。
バークレーズ・キャピタル東京のLiiceanu氏は「2023年まで郵貯が国債保有の市場シェアを維持するためには、毎年郵便貯金の残高が最低でも4.5%増える必要がある」と推計しているがこれは難しい仕事に見える。
郵貯の国債購買能力が落ちる中、銀行、生保、年金基金が主な国債の買い手だが、高齢化が進む中で将来購買能力が落ちることが見込まれている。BNPパリバのストラテジストは転換点は2012年か13年に来ると述べている。
そこで財務省のお役人達が、欧州の投資家を回り始めた訳だ。だが今の金利水準では彼等を引っ張ることは難しいだろう。
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現在の10年物国債利回りは1.35%程度で20年物の超長期国債の利回りは2.3%程度である。この金利差は何を意味するのだろうか?
フォーワード金利の考え方によると、これは「10年後にスタートする10年国債の金利が3.25%程度である」ことを示しているといえる。
アバウトな計算をすると、20年物国債を買う人は「今10年の国債を買って、10年後にまた国債を買うのと同じリターンが欲しい」と考える。今10年の国債を100買って10年間に受け取れる金利の単純合計は13.5だ。20年の国債を100買って20年間に受け取る金利の単純合計は46だ。46と13.5の差、32.5が10年後に買う国債の利息の合計額で、単年度に直すと3.25%。つまり投資家は10年後の国債利回りを3.25%程度と考えているということだ。無論これは極めて単純化した計算で実際は複利計算を行う。
1、2年の間金利は上がらないという見方は正しいと思うが、ぬるま湯に浸かっていると、忍び寄る金利上昇リスクに鈍感になる危険性がある・・・と私は考えている。