今日(2月15日)の日経新聞朝刊を見ると一面の中程に「消費税論議、来月から」と「首相、子ども手当満額支給見送り示唆か」という二つの見出しが躍っている。いずれも民主党が去年の総選挙で掲げたマニフェストの重要政策の変更を示唆するものだ。少し前には「高速道路の無料化を段階的に実施する」プランが発表された。無料化されるところは交通量の少ないところで、実質的には余り影響のないところだ。民主党が政権交代で掲げた政策は急速に色褪せている。
私はこれらの民主党のマニフェストが「客寄せパンダ」以外の何ものでもないことを知っていたので、特段失望はない。しかし選挙民にこのような公約が実現されるのではないか?と思わせた人は責任を負うべきであろうと考えている。
「選択」2月号の巻頭インタビューで、政権交代を主張して、民主党に政策提言を行ってきた山口二郎北大大学院教授が反省の弁を述べていた。
「政権交代が必要だという信念で民主党を応援してきたが、反省すべきところがある。政権交代自体が目的となってしまった。・・・マニフェストも大幅に後退するわけで、一体何が変わったのかという疑問が出てくるのも仕方ない。」「最近の世論調査にも国民のジレンマがよく表れていて、まだ政権交代を起こして四ヶ月、何とかしてほしいという思いが伝わってくる。しかしそれが完全に裏切られたときは、国民の絶望感は計り知れない。政治的ニヒリズムが襲う」
日経新聞がJ・フロント・リテイリングの奥田社長にインタビューした記事の下に「聞き手から」のコメントが出ていた。
「日本人の不安感の底流には政治の迷走がある。民主党の支持率が低迷する一方、自民党への不信感も強い。両党とも消費増税に消極的なのは選挙で票が離れるのを恐れるからだろう。だが北欧の社会保障政策は超党派で進めてきた。充実させるには長期間かかるからだ。具体策を唱え実行する政治が今、求められる」
もっとも政治不信や社会への不満度が高いのは日本だけの話ではない。ドイツなども同じ傾向にある。内閣府が行った「青少年目安箱」という調査によると、日本の青少年で社会に満足している人(満足+やや満足)は35.5%で、不満の人(不満+やや不満)は59.4%。ドイツは満足32.6%、不満65.7%。スウェーデンは満足75.3%、不満23%で、アメリカは満足76.5%、不満21.8%だ。日本、ドイツで不満の大きな原因は「良い政治が行われていない」ことだ。
またWhen China rules the Worldに出ていたデータによると「国の状態」に対する満足度が一番高いのが中国で満足72%、不満19%だ。このデータには日本は登場しないが、アメリカが満足40%、不満57%、ドイツが満足25%、不満73%となっていることを見ると、もし同じ調査を日本で行うと過半数以上の人が不満を示すことは間違いないだろう。
私は日本人の不安や不満の原因は政治の迷走だけではないと考えている。台頭する中国など新興国に市場を奪われて経済成長が余り見込めない日本。中高年には老後の不安や両親の看護問題が圧し掛かり、多くの若者は力を発揮できるビジネスの場を見つけることができない・・・ということが不安と不満の源泉であると考えている。これらの問題を政治の力で解決することは簡単ではない。いや極めて難しいだろう。しかし国の指導者達には国の進む道を示す必要がある。
何故ならこれらの大きな問題を統合的に解決する方法を指導者が提示し、実行しなければ国民の不安や不満は減らないからである。
政権交代が目的化して民主党が掲げた公約が早晩画餅となることは見えていた。だが、鳩山や小沢の政治献金問題だけを追求している自民党も代替案を打出す見識はない。
日本の義務教育は択一問題の回答は得意だけれど、創造性の乏しい人材を作ってきた。同様に日本の政治は裏工作やヤジは得意だけれど、国民的なビジョンを掲げられる政治家をスポイルしてきた・・・ということだろうか?