ニューヨーク・タイムズに「コンテナ船の速度を遅くすることで燃費を改善するとともに、環境負荷を軽減する」という話が出ていた。
大手船会社マースク(デンマークの会社)が、運行する世界最大級のコンテナ船エバ・マースクは、2年前に較べると1週間も余計に日数をかけてドイツから中国の広東に荷物を運んでいる。運行速度を半分にすることで、マースクは燃料を3割も削減することができた。
速度を落とすことで燃費を改善することは、船だけでなく、航空機や自動車にも共通することだ。タイムズは例えば飛行機のスピードを10%落として、ボストン・ニューヨーク間のフライトタイムを5,6分長くすることで、排気ガスを簡単に減らすことができると述べる。また自動車の場合は時速65マイル(104km)から55マイル(88km)に速度を落とすことで20%二酸化炭素を減らすことができると述べる。
船に話を戻すと、現在220以上の船が「遅い運航」(標準速度は24,5ノットだが、20ノットで運行する)を実践している。最初に紹介したマースクの船舶の場合は更に遅く「スーパースロー」(12ノット)で運行しているということだ。
スロー運行により増えるコストもある。例えば航海時間が長くなるので、船員に払う給料が増える。また運行する船舶の数も増える。だがマースク社によると、これらのコスト要因は燃料費の削減により相殺されるということだ。
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人の暮らしについては、スローライフということが言われて久しい。しかしビジネスの世界では「スピード」が競争材料だった。だがスピードを見直す時代になりつつあるということの例だろう。
スピードを落とすことで燃料を節約し、環境負荷を減らす。そして船員の雇用も増えるならこれは皆がハッピーになる方法だ。
スピードに関連していうと、「新鮮さへの異常なこだわり」というのも環境に大きな負荷をかけている。例えばコンビニやスーパーの店頭にならぶサラダや総菜の類。これらのチルド化を促進すると食材の廃棄が減り、運送コストや環境負荷も下がる。環境に優しい会社を応援するとともに、我々もまた環境に優しい消費行動を取りたいと思っている。