エコノミスト誌は日本の予算法案を巡る与野党の駆け引きを「歌舞伎」にたとえた記事を書いていた。記事によると、同誌は1995年に米国で均衡財政を巡るクリントン政権と共和党の対立から政府機関が二度閉鎖された時、「予算法案歌舞伎」と呼んだ。この歌舞伎が本国に戻ってくるという訳だ。
来年度予算法案については、3月1日に衆院を通過し参議院の送られたので、年度内成立は確実視される。しかし赤字国債法案は、参院で否決された場合、衆院で3分の2以上の賛成を持って再可決しないと成立しないが、その目処は立っていない。
来年度予算92兆円の内、税収は48兆円で国債発行額が44兆円。国債の内建設国債6兆円は予算案により起債できるが、赤字国債38億円は赤字国債法案が通らないと発行することができない。
しかし赤字国債法案が通らなくても、直ぐに国の資金繰りが破綻する訳ではない。20兆円の短期国債の発行が予算案で認められているからだ。今年度の例で考えると、第1四半期の支払額は19兆円だったが、税収は2.5兆円だった。従って足らず前は短期国債で資金繰りをつけた。本年度も同じパターンをたどると考えられる。
以上のようなことから、エコノミスト誌は一般的に数ヶ月(別の資料によると半年位)は資金繰りは持つと言われていると述べている。
国の資金繰りに目処がついている間は「予算歌舞伎」を演じるだろうという訳だが、エコノミスト誌はこれは危険なゲームだと警鐘を発する。政治的行き詰まりの悪影響を受けるのは国家財政だけでなく、子供手当てを当てにしている家計や、減税を期待している企業にも影響を与える。また農家に対する税制優遇や輸入食糧品に対する関税減免が切れる等色々な影響が出てくるからだ。
今朝(3月4日)の朝刊は佐藤夕子参議院議員が離党届を提出し、河村名古屋市長が代表を務める「減税日本」に加わる意向を明らかにしたと報じている。
政治的駆け引きに明け暮れる既存政党に嫌気をさした選挙民が、新しい政党支持に回る動きを自民党の林まさよし参院議員が「日本版ティーパーティ」と呼んでいると同誌は紹介していた。
同誌の結論をまとめると「来るべき選挙でどの政党も大きな勝利を得られない場合は自民党が他の野党(例えば公明党)と組んで、菅内閣の財政改革とTPP政策を静かに引き継ぐだろう」から心配するな、ただし国民は幻滅するがと結んでいた。
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09年の総選挙における民主党大勝後の鳩山政権の国益を損ねる様々な愚考があり、また民主党のマニフェストのかなりの部分は実行不可能なことが国民の眼に明らかになってきた。
今菅内閣が行なおうとしている諸政策は消費税の引き上げを含めて本来自民党が主張してきたことだ。財政規律の回復という御神体は正しいが、担ぎ手の怠惰さ・利己主義により、振り回されているのが日本の国政と予算だ。選挙用の祝詞ではない本当に実行するべきマニフェストを掲げ、それを遂行する政党は出てこないものだろうか?