3月20日日曜日夕刻現在福島第一原発で電源の復旧工事が進んでいる。一刻も早く電源がつながり、冷却機能が戻ることを希望する。原発にとって電源が肝であることは数日前に読んだロイターの記事の中で、スリーマイル島原発事故に対応した米国核規制委員会チームのトップだったDenton氏が「電力は原発プラントに不可欠なものだ。動かなくなった原発は発電することができない。従って燃料棒を冷やす水を循環させることができない。そして燃料棒が溶け始める。それが今の状態なんだ」と述べていたことが思い出される。素人講釈は差し控えるべきだが、電源確保が最優先事項だったのだろうか?それについてはもう少し、事態が収まってから専門家の意見を聞くことにしよう。
ところでこのロイターの記事の題はMistake,misfortune,meltdownと3つのmを重ねている。3月18日時点における今回の原発事故に関するfasttrackな原因分析論ということだ。
・ロイターは今回の原発事故の拡大を防ごうとする努力について、「一連の判断や行動の誤り、不運、捨て身の行き当たりばったりの対応」があると述べる。
・ロイターは日本は長い間しばしば独自路線を選択することを誇り、外部の助けを断ってきた。しかし日本の強みが崩壊し始めるとする時何が起きるのか?そして災害が余りにも圧倒的で外部の助けが極めて重要な場合何が起きるのか?と疑問を投げかける。そしてロイターは大地震と津波が襲った後、地震と津波ゾーンに近い4つの原発を無事に、閉じることができたと報じたがそれは真実ではなかったと続ける。
・日本政府に「事実を過少に報道する」という悪意があったかどうかは私には判断する材料がない。ただ当局や東電は「地震、津波、原発内部の事故という個別の問題に対する準備は行っていたが、これらが同時に起きるということは想定外だった」というUnion of Concerned ScientstsのVancko氏の意見には傾聴するべきところがあるとだろう。
・次にロイターは福島第一原発の原子炉の物理的な欠陥に言及する。今回トラブルを起こしたのは、GEのマークⅠというタイプの原子炉で40年前にデザインされたモデルだ。新しい原子炉と違い、このタイプの原子炉では使用済燃料と使用中の燃料が同じ冷却水プールで保管されるので、一つの問題が他に及ぶリスクがあるとロイターは指摘している。
外国政府や専門家は日本の政府が真実を告げていないのではないか?という不信感を持っている。その背景の一つはウィキリークスに外交文書(ウィーンの米国大使館からワシントンに送られた電文)がすっぱ抜いたように、国際エネルギー機構IAEAの谷口冨裕事務次長(経済産業省出身)に対する米国の不満である。その外交文書によると「谷口氏は特に日本の原発の安全訓練に関しては弱い管理者でかつ擁護者で米国を失望させた」ということだ。
・昨年の2月にIAEAは「2007年に起きた柏崎刈羽発電所の事故は世界の原発に対する警鐘だ」と当時のレポートの中で述べている。そこで警告されたことは何か?というと「原発の最大のリスクは建家の壁の中ではなく、その外側にあるかもしれない」ということだった。
・IAEAによると「原発建設の初期の段階から、原発内部のヒューマンエラーや機械の不具合が、外部環境に放射線汚染が起きる最大のリスク要因と考えてきたが、これは誤った考えで実は台風、洪水、地震、津波・・・といった天災が最大のリスクかもしれない」ということだ。
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福島第一原発の事故原因については、今後専門家と称する人が色々な解説を加えるだろうから、この辺りでロイターの分析の紹介は終りにしたい。
ロイターの分析を私なりに解釈すると以下のようなことになるだろう。
「原発の最大のリスクは、台風・地震などの自然災害で、外部から原発の運用環境が破壊されることである」「例えば原発には冷却水を循環させるあtめの電力が原発停止後も必要だが、今回の事故のように発電装置が破壊された場合は、燃料棒が空気に触れた状態が続き、メルトダウンが始まる可能性がある」
「日本の当局は外部や外国の専門家のアドバイスに耳を傾けなかった。スリーマイル島などの貴重な経験が活かされなかった。」
今回の原発事故が当事者の想定外のことだったのかどうか?ということは、責任問題と関連して、今後相当議論されるだろう。東電やそれを監督した国はどのような責任に問われるのか?またどこまで免責されるのか?ということについて私は門外漢なので言及は差し控える(また現時点で判断材料もない)。しかし原発という難物を扱うには、自然環境の問題を軽く考えていたという批判は後講釈とはいえ、避けられないだろう。そしてこのようなレポートの主旨が広く知れ渡ると、今稼働中の原発について新しい切り口から安全性の検証が求められることになるだろう。