金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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ベストシナリオでも、電力不足は続きそうだ

2011年03月19日 | ニュース

東日本大地震による今後の電力需給に関するレポートがNautilus Instituteというところからリリースされたいた。これは日本、オーストラリア、米国、中国等の研究員による現時点でのレポートであり、当然今後の展開により電力需給は変わる。レポートの精度について、チェックはしていないが、参考になると思ったのでポイントを紹介したい。なおレポートのタイトルはAfter the Deluge。Delugeは大洪水、the Delugeはノアの箱舟の洪水を指す。

・2009年に東電は300テラワットアワー(TWh)の発電を行なった。内約30%は原子力発電。平均一日の電力需要は東電が34,000メガワット(MW)で東北電力が9,900MW。

・2009年における東電のピーク電力需要は約52,000MW(52ギガワット)で、東北電力の2010年におけるピーク需要は14,500MW。つまり60ヘルツ圈でピーク時に66,500MWの電力需要があった。東電のレポートによると、大地震直後の一日の電力需要は41,000MW(計画停電効果を含まず)。

・発電能力についてレポート本文と添付資料の数字が若干違うが、ここでは資料の数字に従うと、東電・東北電力合わせて、発電能力は75,508MWだ。ただしこの内揚水式水力発電が10,543MWを占める。原発の発電能力は20,582MWで、火力は42,810MWだ(風力発電等を省略したので合計と若干違う)。揚水式水力発電を除くと発電能力は、64,965MWである。つまり夜間電力を使う揚水式水力発電を除外すると、大地震前でも発電能力はピーク時の電力需要ギリギリまたは若干下回る状態だった。

・今問題になっている福島第一原発の発電能力は5,650MWで、地震後運転を中止している福島第二原発の発電能力6,600MW、女川原発の2,894MW合計15,144MWの発電能力がストップしているのが現状だ(この数字は表から拾ったものですが、一部表に読み取りにくいところがあるので、正確性は保証できません)。なお火力発電所でも大震災の影響を受けているところがあるので、大雑把にいうと4分の1の発電能力がストップしているのが現状ということだろう(筆者意見)。

では将来はどうなるのか?

これについてレポートは3つのシナリオを示している。ここではまず「ベストケースシナリオ」を紹介する。

・ベストケースでも福島第一原発は、放射能汚染除去後、廃炉にされる。このプロセスは恐らく10年以上かかり、数千億円のコストがかかると考えられる。

・ベストケースシナリオでは、大地震後安全に冷温停止し現在停止している東北電力の女川原発(発電能力2,894MW)がすぐに再稼働することにし、状況が明らかでない福島第二原発についても相当長時間(レポートでは2年)の検査を経て再開されるという前提に立つ。

・大震災で大きな被害を受けた相馬・原町二つ火力発電所(合計4,000MW)の復旧に6ヶ月程度を要すると仮定。また地震時点で操業停止していた東電の火力発電所(7,000MW)は比較的早い段階で操業開始が可能という前提。

・以上のようなことから、福島第一原発分4,700MW(上記の数字とは少し違うがレポート本文を採用)は、復旧不能なので火力発電で補うか、需要調整を行う必要がある。

・年間発電量の観点からは、2009年の東電の原発は約90テラワット(総発電量の3分の1)の発電を行ったが、今年は被害を受けていない原発をフル稼働しても、約39テラワットのみの発電が可能と推測される。つまり51テラワットの電気は火力発電に頼る必要がある。東電は260テラワットと火力発電を行う必要があるが、これは現在稼動している発電所をほぼ100%稼動させることを意味する(2009年の平均稼働率は65%)。また休業している火力発電所を再開しても81%という極めて高い稼働率となる。レポートは「東電がこのような高い稼働率を維持できるのか、また燃料を確保することができるのか?」と疑問を投げかけている。

仮に当面は計画停電でやり繰りし、早い時点で操業停止している火力発電所(7,000MW)が稼動したとしても、福島第一・第二の発電能力(約12,000MW)を下回る。気になるのが夏の電力需要がピークに達する時。現在でも揚水式水力発電を除くと、ピーク需要はまかなえない状態だ。

ここ数年「節電、節電」の掛け声が続きそうだ。我々は生活の仕方と仕事の仕方を根本的に見直す必要があるのではないだろうか?

コメント (2)
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