金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国、原発事故地域からの食品輸入禁止、小さな疑問

2011年03月23日 | ニュース

今日(3月23日)のお昼のテレビで、米国の食品医薬品局が福島原発で放射能汚染された地域からの野菜、果物、ミルクの輸入を禁止したというニュースを見た。今回の事故に関して食品輸入を禁止したのは米国が初めてだ。民間輸入業者の中には独自判断で既に輸入を止めている業者もあるが、ロイターによると他の国も米国に追随しそうだ。

また午後には東京都の金町浄水場で、幼児向け基準を上回る放射性ヨウ素が検出されたので、都は幼児が水道水を飲むことを控えるように要請している。

またスーパーやコンビニの棚から飲料水のペットボトルが消えてなくなりそうだ。

米国を中心とする諸外国が今回の福島原発事故に神経を尖らせ、日本政府や関係者に正確な情報の迅速な公開を求めている理由は、放射性物質の影響が広範囲にわたるからだ。米国のゲーツ国防長官は日本とその近海に展開する5.5万人の米軍に対する放射性物質の落下リスクに懸念を示している。

放射性物質の拡散は全世界に及ぶ。無論それは人体に影響を及ぼすレベルよりはるかに低いが、アイスランドでも放射性微粒子が観測されている。今世界の目は福島原発を向いている。

さて小さな疑問というのは、日本から米国にミルクが輸出されいるという事実。野菜や果物については、日本の食材を好む在米駐在員などがいるので、輸出されることは分かるが、ミルクまで輸出されているとは知らなかった。農林省発表では食糧自給率40%の日本がミルクまで米国に輸出していたとは少し驚き。

大震災前はTPP参加を巡って、食糧確保が国の生命線かのごとき議論がなされていたが、大災害を経験してみると、生命線は至るところにある。まず道路網・鉄道網のインフラや燃料が確保されないと、食糧を輸入しても消費地に運ぶことができない。

大震災と原発事故を踏まえて、安全性とは何か?それをどのようなプライオリティで考えるか?ということをもう一度考える必要があるだろう。

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菅(首相)はできるか?

2011年03月23日 | 政治

米国の外交問題専門誌Foreign Policyに「菅はできるか?」という寄稿があった。原題はKan do? で寄稿者はMITの博士論文提出資格者のHarris氏。Kanとcanが掛詞になっていると思ったので「菅首相はできるか?」と解釈したした次第。副題はJpan's embattled prime minister learns to lead.「追い詰められた日本の首相は指導することを学んでいる」だ。

記事に特段目新しいことはないが、今回の大震災対応に関する内閣の対応への外国勢の一つの評価として参考にはなるだろう。ポイントを意訳すると以下のとおり。

「大震災の4日前には、菅首相の後継者と目されていた前原外相が、外国人政治献金問題で辞任し、震災の一日前には菅首相自身在日韓国人からの献金問題で政治生命が危うくなっていた。しかし震災の危機は総てを変えてしまった。」

「菅首相自身は~少なくとも枝野官房長官に較べると~危機の間、完全に国民を鼓舞していた訳ではないが、内閣自体としては困難な状況下良くやっている。菅首相は自衛隊総数の半分に相当する10万人の隊員を素早く人命救済活動に派遣した。また初めて予備自衛官の動員を決めた。また議論の対象となっている普天間基地からのヘリコプターを含む米軍の支援受入を素早く決定した」

「1995年の阪神大震災に対する当時の政府の拙い対応に較べると、菅内閣の初期動作には決断力があった。政権担当後半年ということを考慮すると印象的ですらある。放射線で汚染された食品に対する危機感が高まっていることなどを考えると、最終的な評価を下すには早過ぎるが、大震災後の1週間は困難に全面的に圧倒されることもなく、多くの難問を今のところ調整している。」

「菅内閣の成果に対する国民の反応は分かれている。支持率は10%以上上昇したが、福島原発事故に対する対応では評価しないという意見が僅かながら支持率を上回っている」

「しかし当面の間、菅首相と民主党は現状を保つだろう。復興という大きな課題を控えているため、民主党が再び党首を変えるとは考えにくいし、野党が望んでいた総選挙が行なわれるとも考えにくい。」

「日本が近い将来行なわなければならないことは明確である。政府と野党は震災で被害を受けた東北地方の再興と国民経済に対する長期的な損害を最小化する計画を打ち出さなくてはならない。また与野党は原発危機の事後分析を行い、何が問題だったかを明らかにし~特に政府と東電の関係について~、原発業界に対する規制強化を考える必要がある。」

「ある時点で、恐らく早い時点で、政治は正常に回帰するだろう。しかし震災の後で『正常』は何を意味するのだろう?どのように日本の政治システムが機能するかという問題になると、答よりも質問の方が多い。」

「最初の疑問は菅首相は続くか?ということだ。首相は三振している訳ではないが、難局に正確に上手く対応している訳でもない。従って菅首相が2012年9月の党首の任期まで首相を続けられるかどうかは疑問である。復興期間中は多分菅首相の政治生命は安全だろうが、2013年の総選挙の前には民主党はより人気のある政治家と交代させることを考えるだろう。」

「首相の運命よりも重要なことは、震災危機の民主党に対するインパクトである。震災危機は民主党に国民を主導することを教えているだろうか?今や民主党は09年の総選挙で掲げたマニフェストの一部を廃棄する以外の選択肢はほとんどない。」

「もう一つの疑問は野党が政府に協力的になるかどうかという点だ。現時点で自民党を公明党は政府に強力することを強いられているが、次の局面ではどうだろうか?」

「最大の疑問は今回の危機が、いかに日本が統治されるか?とうことの転換点になるかどうかだ。5人の首相が短期間に交替し、主導的政治家はスキャンダルにつきまとわれ、政権交代は失望に終り、優柔不断はリーダーシップが続くという日本の政治システムと持続的な経済の低下は底に達したように見える。しかしこの恐ろしい災害に中で、将来を見据えた行動をとるならばこれを転機とすることができるだろう」

☆   ☆   ☆

国の債務がGDPの2倍に達している日本にとって、20兆円程度かかると考えられる大震災復興資金を捻出することは容易ではない。福島第一原発からの放射能汚染による農作物被害の拡大が続くなど、被害の範囲は拡大を続けている。

民主党はまず「子ども手当」や「高速道路無料化」などのバラマキ政策を一度完全に白紙に戻す必要がある。普天間の問題ももっとdecisiveに動く必要があるのではないか?

今はwant(欲しいもの)で政策で決める時期ではなく、needs(必要なもの)で政策のプライオリティを決めなければならない。資源が多い時は本当はリーダーは要らない。配分する資源が少ない時こそ、強いリーダーシップが求められる。

まさに「菅にそれができるか?」という疑問が投げられている。

コメント (1)
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