正直なところ、全くの文系人間である私には原発事故の原因や問題の深さについてよく分からない。しかし英文ロイターの特別レポートFuel storage,safety issues vexed Japan plantをざっと見ると、今回の事故が拡大した背景には、地震と津波という天災だけではなく、原発の管理、特に廃棄済み燃料の保存の問題等があることが少し見えてくる。合わせて監督するべき国と監督される東電の距離の近さ、はっきりいうとある種の癒着に近い状態が見えてくる。
一つのレポートだけを見て、多くのことを判断するのは危険だが、今後問題解明が進む中で頭に入れておいた方が良い点が幾つかあると思われる。
レポートによると、部分溶融が起き、放射性物質を含む煙を上げている福島原発は設計上想定された量をはるかに上回る廃棄済み燃料を貯蔵していた。IAEAが開催した会議において東電は、6年分近い廃棄済み燃料を保存していた。
地震が発生した時、約4千本の使用済み燃料棒が原子炉の建屋の最上階の循環式プールに格納されていた。この想定を超える使用済み燃料が、事故対応を複雑化させたと役人と専門家は述べている。米国の原子力技術者は「使用済み燃料は相対的に薄い容器に入れられ、一つのポンプ式冷却システムに依存しているので、被害を受け易い。これは災害のレシピだ。」と述べている。
建屋の最上階に設置された使用済み燃料プールは、最上階であるだけに地震の際、揺れ易く水が飛び出したり、プールにひびが入り、水が漏れるリスクが高いと専門家はコメントする。
使用済み燃料の保管の問題は、日本だけでなく米国も抱える難しい問題である。日本では六ヶ所村に再処理工場を建設する予定であったが、完成は2012年まで延期されている。
素人的な言い方をすると、捨て場がない使用済み燃料を仕方なく、原子炉の最上階に貯蔵しておいたところ、予期せぬ大地震と津波がきて、問題を更に大きくしたというのが、福島原発事故の一つの構造ということだろうか?
問題はそれだけではない。東電は事故の2週間前に当局(原子力安全・保安院か?)に、予備用発電機を含む33の設備の部品について検査を見落としていたと報告している。
原発の建設や運営を管理する国側と東電が近過ぎるため、監督官庁のチェックが甘くなっていたという問題も指摘されている。例えば東電は2002年に6つあった原子炉のひび割れを3つと改竄して報告し、当時の社長らが引責辞職するという不祥事を起こしている。
また東電を監督する側の資源エネルギー庁長官の石田 徹氏が、退官後僅か4ヶ月で東電に顧問として天下りしたことも、昨年話題になった。
これらのことは今後マスコミで色々と取り上げられるだろうから、門外漢の私が深追いすることはやめておく。
私は資源小国の日本にとって原発は避けて通れない選択であると考えているが、安全性基準の問題と監督機関と電力会社の問題は相当議論をしないといけない問題として再認識しておく必要はある・・・と感じている。