Turn a cornerというと「角を曲がる」という意味だが、turn the cornerとなると「危機を脱する」「峠を越える」と意味で使われる。昨日米国のJPモルガンの決算発表があったが、ダイモンCEOはThe US housing market had turned the corner(米国の住宅市場は危機を脱し終えた」と言った。
米国では連銀のQE3と呼ばれる量的緩和策で、住宅ローンの金利が低下し、ローンの借換や新規申込が増えている。このため手数料が増えて同行の第3四半期の純収入は34%増えた。
米国の消費者のセンチメントは確実に回復している。ロイター/ミシガン大学が発表している9月の消費者センチメント指数は、2007年9月以降一番高い水準になった。
このような経済環境から、連銀は3年間ゼロ金利を続けると言っているが、来年には金利は上昇に転じる可能性があると述べた。日本の景気後退が鮮明になってくる中で、米国の住宅市場が危機を脱したというのは、うれしいニュースである。
「スマホやタブレットがデフレを加速する」といっても、総務省が来年から消費者物価指数の構成品目にスマホを加えるというテクニカルな理由ではない。むろん競争激化で価格下落が見込まれるスマホが構成品目に入ると物価指数を下押しする可能性は高いが・・・・
ここで言いたいことはスマホ・タブレットが、消費行動や電気製品のあり方を大きく変えるということである。
小さな話から始めると、スマホを使っていると飲食店の電子クーポンが手に入る。私はドコモのスマホを使っているが、「トルカ」という電子クーポンが送られてくる。その電子クーポンの中にサンマルクカフェのコーヒー割引券があり、クーポンを提示(スマホの画面を見せる)すると一杯200円のSサイズのコーヒーが100円で、250円のMサイズが150円で飲むことができる。同様のサービスはマクドナルドでも行なっている。サンマルクカフェやマクドナルドのコーヒーは、スターバックスに較べると、テイスティではないが、ちょっとした時間潰しになら手頃な価格だ。
これはごく一例だが、スマホ・タブレットが割引クーポンや消費者に有利な価格情報を提供し続けることで、小売業者に半永久的に厳しい価格競争を強いる構造ができている。タブレットが普及してくるとさらにインターネット経由による物販が加速し、物価を押し下げる要因になるだろう。
「電気製品のあり方を変える」というのは、一昔前であれば「写真はデジカメ」「録音はICレコーダー」「ラジオ放送はラジオ」「本は本屋で」「ビデオはDVDで」・・・という具合に「1機能=1製品」だったものが、プロ・ハイエンドアマチュア用でなければ、ほとんどスマホ・タブレット端末1台で済んでしまうということだ。かって「薄型テレビ・DVDレコーダー・デジタルカメラ」を新・三種の神器といった時代もあったが、これがスマホ・タブレット1台に代替される可能性がある訳だ。
それによって従来作られていた電気製品は廃止に追い込まれ、紙の本は売れなくなり本屋は倒産する(アメリカの話だが)。
スマホ・タブレットは若者中心に趣味嗜好を変えた。オンラインゲームを全くしたことがない私はこの問題の門外漢だが、ゲームに多額のお金を使う人はそれ以外の消費支出を圧縮していると聞く。
このように考えると、スマホ・タブレットの普及はデフレを加速する要素に満ちている。無論デフレの原因は、人口減少、少子高齢化、可処分所得の停滞、発展途上国から安価な商品の流入など多様である。
そしてスマホ・タブレットもその原因の一つである。ことの良し悪しは別として。