金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

アマゾンの安売り、米小売業の脅威

2012年10月26日 | 社会・経済

アマゾンが昨日発表した第3四半期の決算は、274百万ドルの純損失。内169百万ドルは2010年に買収したLivingSocialというオンラインクーポン会社に関わるものだが、それを除いた本業でも損失がでている。発表直後に株価は9%ほど急落したが、最終的には2.4%の下落まで回復した。株価が急反発したのはアマゾンの経営戦略を評価する投資家が多くいるということだろう。

アマゾンの戦略は他の米国企業と大きく異る。株主の発言力が大きい米国企業経営では、利益を最重視するが、アマゾンは違う。アマゾンは利益よりも成長性と市場シェア拡大を重視している。そのアマゾンの戦略を支持する投資家がいるということは、アマゾンには強力な援軍だが、商売上の競争相手にとっては、違うルールで格闘技を戦っているような違和感があるだろう。

昨日は日本でも電子本を読むことができるタブレット・キンドルを12月に販売開始すると発表したアマゾン。日本の新聞を見るとアマゾンとアップル・グーグルを並べてタブレット端末の性能や価格を比較した表を見かけるが、このような比較はアマゾンの本当の姿を見失う可能性がある。

アマゾンは電子機器メーカーではなく、小売業者なのである。もちろんリアルな店舗を持つ小売業者ではなく、オンライン上の小売業者だが。だからアマゾンの競争相手はアップルではなく、Radio Shark、Best Buyといった家電小売業者など小売業者なのだ。

アマゾンの安売り戦略は、リアルな店舗で営業する家電量販メーカーなど小売業者にとって大きな脅威で、たとえば昨日第3四半期は大幅減益になるだろうと発表した家電小売業Best Buyの株価は10%急落した。

アマゾンは全米各地で巨大な配送センターの建設を急いでいる。その投資負担が利益を圧迫しているが、巨大配送センターが完成すると、アマゾンは配達に要する日数を一日短縮することができると言っている。これはリアルな店舗を展開してる小売業にとってはさらに大きな脅威だろう。

ユニクロがデフレを助長するという主旨の本がちょっと売れたことがあったが、同じノリでいえば米国で巨大なインフレストッパーになっているのは、アマゾンだ。だがそのお陰で今後退場を余儀なくされる小売業者が続くのではないか?

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