週末のG20会議では「通貨戦争」を避けることが確認された。安倍政権発足の目処が固まった昨秋以来円はドルに対して16%、ユーロに対して19%下落していた。これに対してユーロ圏からは円安政策は通貨戦争を引き起こすという警告が出ていたが、世界の金融財政トップは通貨戦争を避けることで合意した。またそれは日本がデフレ脱却に向けて積極的な金融政策を持続することに青信号を灯したともいえる。
日本にとって経済成長、特に名目的な経済成長が必要な理由は、持続的な経済停滞が、社会的・政治的さらには道徳的に幅広いダメージを日本に与えてきたことだと私は思っている。
明日相続学会で話すことの一部と重なるけれど、親の遺産をめぐる兄弟の争いが激化するいわゆる争族問題の一つの背景は、遺産への過大な期待感があると思う。
親の遺産に頼らなくても生活できるような家計構造を作ることができるならば遺産をめぐる争いは緩和されるはずだ。また遺産の絶対額がある程度大きいと相続人間の不公平をある程度容認することができるだろうと私は考えている。これは「持続的な経済成長は他人よりも良い生活をしたいという欲望を弱くする」という経済学の一つの原則を応用したものだが。
経済成長が社会の変化に対する人々の許容度を高める機能を使って、構造改革と効率化に向かって変革を推進するべき時がきた、というべきだろう。「構造改革なくして成長なし」といった総理大臣がいたが本当は「成長なくして構造改革なし」というべきだったのだ。