金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

専務理事が語る「相続学」とは?その1

2013年02月07日 | 社会・経済

昨年11月から始まった相続学会のリレーセミナーは今月で3回目だ。今月は私と司法書士の宮田さんが話をする番だ。日時は18日午後5時から。場所は神田である。http://www.souzoku-gakkai.jp/seminar/index.html

人前で話をすることに抵抗はないが、小さな団体とはいえ「学会」で話をするとなると、ある程度論理的にストリーを組み立てる必要があるので少し準備をした。

ストリーはざっと次のようなことを考えている。最初に前回の講師・常岡獨協大学教授から渡された「多様性」という言葉で相続問題を考えていく。「多様性」という言葉は幅の広い言葉なので、あまり勉強していない学生に教授が救済のためレポートや論文試験の課題に与えるテーマ、と考えて良いかもしれない。つまり「それなりに何か書ける」テーマなのである。

さてスタート点としては「多様化している日本人の遺産動機」という切り口から考えてみた。日本人の遺産動機が多様化している、という時系列的に明確な統計調査に出会った訳ではないが、外国との比較などで日本人の遺産動機は分散化している、と私は感じている。具体的にいうとアメリカやインドのように宗教色が強い国では多くの人々は「利他主義的な遺産動機」を持っているが、日本では「自分の生活重視で余ったら残す」とか「世話をしてくれた子供に多く残す」という利己主義的な遺産動機を持つ人が多いのではないか?という推論である。

宗教観が遺産動機に影響を与えているのではないか?というのは大阪大学社会経済研究所のホリオカ教授のご意見で私はかなり共感している。多くのインド人はヒンドゥ教を信じ、多くのアメリカ人はキリスト教を信じている。二つの宗教の教義には大きな違いがあるが、最大の共通点は霊魂を信じることである。もっとも霊魂を信じない宗教などないだろうが。霊魂の永続性を信じると肉体の価値は相対的に下がる。

輪廻転生を信じるヒンドゥ教は肉体は霊魂の乗り物(ヴィークル)に過ぎないと考える。ヴィークルというと、現代を代表する進化生物学者は「個体は遺伝子の乗り物(ヴィークル)だ」と喝破した。世界的な宗教と進化生物学にある種の共通した生命観を感じる。

私見でいえばこの種の死生観の欠如が今の日本の社会、とくに高齢化社会の特徴をなしている、と私は考えている。例えば「命が回復する見込みのない人への終末医療」胃ろうなどの問題である。肉体の生への異常な固執、である。それが日本教といえばいえなくもないが。

これは進化生物学的にいうと異常な現象ではないか?生物本来の遺伝子は強い子孫を生む生殖能力を失った個体は、若い世代に生活の場を譲り静かに消えるようにプログラムしているはずだ。生命の本質が遺伝子を運ぶことである、とすれば。

「介護してくれた子供に多くの財産を残す」という遺産動機も進化生物学的には異常で、「できるだけ多くの遺産を均等に残す」という利他主義的な遺産動機が進化生物学と整合的だ、と私は考えている。その歪みが遺産相続争いの一つの原因となっているのではないだろうか?

明治のキリスト教思想家・内村鑑三は「人はまず事業を残せ、事業を残せないなら金を残せ、事業も金も残せないなら清らかな人生を残せ」と述べた。立派な遺産動機というべきである。まず自分なりの遺産動機を見つめることから、相続争いの防止は始まるのではないか?

ということでスピーチの3分の1は終わり。

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日本でも起きるか?土曜日の郵便配達中止

2013年02月07日 | ニュース

今朝(2月7日)テレビを見ていたら、米国で土曜日の郵便配達を中止する方向となった、と報道されていた。

ニューヨーク・タイムズによると、米国郵政公社は2006年の法改正で将来の退職者の健康保険ファンドに年間約55億ドルの拠出をすることが必要となったことが主な原因で赤字が続いている。昨年の郵政公社の純損失は159億ドルに達した。このままいくと2016年までには年間赤字額は210億ドルに拡大すると予想されている。

過去の私の個人的な経験でいうと、米国の郵便は日本の郵便よりもより深く日常生活に組み込まれていた。というのは自動引落システムがなかった米国では毎月小切手(預金の払い出し請求書である)を郵送して公共料金の支払等をおこなっていたからだ。

だがインターネットの普及で小切手払いはオンライン化されてきた。また手紙は当然電子メール化して封書の取扱高は減少が続いている。

今年8月から土曜日配達を止める方向で動き始めた郵政公社によると、それにより年間20億ドルのコスト削減につながるという。

郵政公社が独自判断で土曜日の手紙配達を止めることができるかどうかは議論のあるところだ。土曜日配達は1981年から議会承認を得て行われているから廃止には議会の承認が必要という意見と郵政公社は赤字削減策実施の権限を与えれているので、議会の承認は不要とする意見がある。

ニューヨーク・タイムズCBS共同の昨年の世論調査によると7割の国民は赤字削減のために土曜配達停止を支持しているし、オバマ政権も支持している。従って封書の土曜日配達は中止に向かうだろう。

他の国の状況を見るとカナダは1969年に週5日配送に切り替えているし、スェーデンやオーストラリアも5日制に変えている。またドイツは土曜日配達に特別料金を課している。

我が国の郵便事業(日本郵便)の状況をみると、ゆうパックは増えているものの、郵便物のボリュームの減少は続いていて、2013年中間期は266億円の営業損失で230億円の当期損失だった。ただし前年同期よりは赤字額は減少している。

日本の郵便配達日は郵便法施行規則(総務省令)で週6日間配送が決められている。個人的には経費削減のため土曜日配送を止めても良い、と思うが赤字額が相対的に少ないことや改善傾向にあることを考えると、土曜配送中止はまだ大きな話題にはならないかな、と思う。痛手が顕在化するまで出血を止められない日本人の、特に官僚の体質として。

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