昨日発表された米国の1月の物価水準は前月と変わらず。つまり物価上昇率はゼロだった。ノーインフレだ。もっとも食料とエネルギーを除いたコアCPIは0.3%上昇。つまりガソリン価格の急速な下落が物価上昇を押さえている。
インフレが沈静化している米国でインフレになっているものは?というとそれは大卒資格である。
ニューヨーク・タイムズはアトランタでの取材をもとに記事を掲載しているが、それによるとある法律事務所では、大卒レベルの職能を必要としない事務職レベルの仕事についても大卒者のみを採用している。
アトランタ地区では秘書や一般事務職で大卒資格が求められる比率は5年前の28%から2012年の39%に10%以上上昇している。
一部の仕事~例えば供給チェーン管理や物流管理の仕事~が過去にくらべて高い技術を必要とするようになってきたことはあるが、より一般的な理由は多くの人が大学に進学するようになった結果、大学を卒業していない人は「向上心がない」か「能力がない」と思われることが多い、とニューヨーク・タイムズは指摘している。
採用市場が雇用者に有利なことも大きな原因だ。多くの企業ではレジメの段階でふるいにかけるのである。
記事によると、今の大卒者は与えられた極めてルーチン的な仕事を喜んでこなすという。
かって私がアメリカに滞在していた頃とは様変わりである、と感じた。当時大卒採用者にクラーク的な仕事をさせると猛烈な反発を食らうことがあった。これもまた厳しい雇用関係の結果なのだろう。
最後にニューヨーク・タイムズは「仕事に必要とされる以上の資格を持つ人間を採用することのリスクは、経済情勢が好転して、職探しが容易になった時、彼らがすぐ離職リスクである」と締めくくっていた。
大卒者がコモディティのようになってきた時代。差別化が必要だろう。例えば名門大学にこだわる、大学院を目指す、司法試験等のレベルの高い試験に合格する・・・などである。本当に社会にでて必要なことは、実は人間力なのだが、レジメの段階で人間力が採用者にアピールしないことは洋の東西を問わない問題なのだろう。