昨日発表されたアメリカンエアラインとUSエアウエイズの合併。もし独占禁止法取締機関の承認を得ることができれば、アメリカのメジャーキャリアは3つになる。アメリカン(新しくできる合併会社)とデルタエア、ユナイテッドエアラインだ。
航空会社の経営陣は合併はより多くのサービスをより多くの行き先に提供するので旅行者にプラスだと主張しているが、ニューヨーク・タイムズによると、経済学者や消費者保護活動家の中には合併は運賃の値上げなどで旅行者の負担が増えると警鐘を鳴らす人がいる。
リッチモンド大学の交通経済学者Hoffer氏は「3つの航空会社になると『暗黙の共謀』はもっと容易になる。それは違法ではないが、小さなボートに数少ない大男を乗せるようなものだ」という。
ここ数年航空運賃が均一になってきたことや総ての航空会社が運賃以外の料金(荷物のチェックインや予約の変更料金等)をチャージするようになってきたことを見るとこのことが分かるとHoffer氏は述べる。
確かに大手3社が米国と世界の空で支配権を高めると料金競争は減り、運賃が上昇する可能性はある。しかしである。私は航空会社のもっとも大事で基本的なサービスは事故のないオペレーションを継続することで、そのために航空会社が財務的な健全性を維持することが必要だと考えている。
ここ数年間大きな航空事故は減っている。それが航空会社のバランスシートの改善とどう関係しているのかは分からないが、事故予防に関する投資余力が出てきた結果と考えても良さそうだ。
今週ニューヨーク・タイムズに出た別の記事では半世紀以上前に始まったジェット機時代で過去4年は米国で最も致命的な事故が少なかった。
また世界的にみても昨年は1945年以降で一番安全性が高い年だった。昨年は23件の航空事故で475人が亡くなった。結構な数だと思うが2000年の42件の事故で1,147人が死んだことに較べると半分以下の犠牲者で済んでいる。
ある米国の統計学者は、死亡事故の確率は4千5百万フライトに1件の割合で、別の見方をすると1人の旅行者が毎日飛行機に乗るとして、平均すれば死亡事故に遭遇するには12万3千年を要すると計算している。
航空事故が減っている背景には多くの要因がある。例えば機体やエンジンの信頼性が高まった。最近のボーイング787をバッテリートラブルから運行停止させたように予防措置も取られるようになった。
だが航空事故を減らすには操縦士の訓練が基本だ。米国の連邦航空局は副操縦士に操縦士と同じ1,500時間の飛行経験を求める(現在は250時間)ように規則変更を図ったが議会の承認を得られなかった。航空会社がロビー活動を展開してストップをかけたようだ。
いずれにせよ、航空事故を削減するには物的・人的投資が必要である。人の命は多少の運賃の安さと交換できるものではない。
私は航空会社が疲弊するような料金競争を止めて、安全性向上に投資余力を高めることに賛成だ。