明日(8月12日)4-6月のGDP成長率が発表される予定だ。エコノミストの予想は年率換算3.6%程度だ。今回のGDP成長率は来年4月の消費税引き上げに影響を持つと思われる。安倍政権に近い経済学者の中には、景気の腰折れを懸念して消費税引き上げ延期を主張する人がいるが、果たしてそのような主張は世界の常識に合致するものなのだろうか?
IMFが先月発表した今年の経済成長見通しによると、日本の成長率は2%で、米国(1.7%)やユーロ圏(マイナス0.6%)を上回っている。先進国の中では相当高い数値である。もしこの成長率を持っても、消費税の引き上げを延期する、というのであれば一体何時どのような状態になれば日本は消費税を引き上げるのか?と世界の常識的な人々は考えるだろう。
日本の借金の水準がコントロール可能であれば、消費税の引き上げタイミングを図る余地はあるかもしれない。しかし国債発行残高は早晩1000兆円に達する見込みだ。これはGDPの2.5倍という世界的に非常識極まるレベルだ。
世界の常識を外れているというと、消費税の低さも先進国では群を抜く低さだ。もし5%の消費税が8%に引き上げられると不況に陥るというのであれば、世界の多くの国は既に大恐慌に陥っているはずだ。
過去日本は色々なことで「特殊な国」と自分たちを考えてきた。ないしは「特殊な国」と教える人々が国の舵取りを誤ってきた。古いところでは「神国思想」であり、新しいところでは「土地神話」だ。もっともこの土地神話もバブルの崩壊で崩れたが。
今の「神話」は日本の国債は日本人が保有しているから、財政状態が悪化しても国債の暴落はないという国債神話だ。だがこの神話はすべての国債が日本の投資家だけで消費されているという前提の上に成り立っている。
高齢化により貯蓄の取り崩しが進むと、日本の国債も海外の投資家への依存度が高まる。その時海外の投資家は「世界の常識」で日本の国債のプライシングを行う。
つまり日本の国債神話は先の見えた神話であり、神通力が失せる日はそれほど遠くはない。よって今こそ世界の常識で財政問題を考える時である。
世界の常識の第一歩は規律と自制心を持った国民だ、と思われることである。日本がアジアの中で真っ先に先進国入りできた最大の理由は、国の借金を払う強い意思と徴税システムを備えていたからである。
国の借金は今の国民一人ひとりの借金なのである。本来税金で賄われるべき政府支出の内、かなりの部分が「国債」という形で後世に先送りしていることは異常なことなのである。