昨日のロイターは米国および同盟国の英仏等はシリアに対して化学兵器使用に対する懲罰として軍事攻撃をする準備を整えていると報じた。これはイスタンブールで行われた各国特使団とシリア国民連合の会談に出席した人からの情報。
ホワイトハウスのカーニー報道官は「数百名のシリア市民を殺した化学兵器の使用についてアサド大統領以外に責任があると考えるのは空想的」と述べた。またカーニー報道官は「オバマ大統領は最終決定を行なっていないが軍事行動を取ることについてほとんど疑う余地はない。ただし米国政府はアサド政権の打倒を目指しているのではなく、軍事攻撃は限定的になるだろう」と述べた。
米国やその同盟国の首脳の悩みは、化学兵器という人道上許されざる兵器の使用に制裁を加えないと、核兵器開発を進めるイランに対する牽制が効かなくなるという懸念とアサド政権を打倒するとその後無政府状態が続くことに対する懸念だ。アフガニスタンの二の舞いを避けたいという思いだ。
ところでアサド政権は今回の化学兵器使用前でも近隣諸国の評判が非常に悪い。ピュー・リサーチ・センターが8月27日に発表した近隣諸国の世論調査では、レバノンのスンニー派、イスラエル、ヨルダンでは9割以上の人がアサド不支持である。エジプト、チュニジアでは8割、トルコでは7割の人が不支持。唯一高い支持を与えているのはレバノンのシーア派で91%の人が支持している。
同盟国としてアサド政権に武器を供与しているロシアでも国民の間でアサド政権を支持する人は27%で52%のロシア人はこの問題について意見なし、としている。
一方欧米諸国の世論は、シリアの内戦に関与することに反対が多い。ピュー・リサーチ・センターが昨年12月に米国で行った調査では約63%の人がシリアに関与することに反対だった。ただし同センターが今年4月に行った調査では、化学兵器の使用が明らかになれば45%の人は米国の軍事行動を支持し、反対する人は31%にとどまった。
なお英国では57%、フランスでは69%、ドイツでは82%、トルコでは65%の国民が、シリア反政府軍に対する武器支援や軍事介入に反対であった(化学兵器使用前)。